「うちの子、どのくらい歩けるんだろう」——子どもと登る山を選ぶとき、最初に手が止まるのがここです。
先に大事なことを書きます。距離では決められません。同じ年齢でも歩ける量の幅はとても大きく、しかも当日の睡眠や気温で簡単に変わります。だから決めるのは距離ではなく、行動時間・休憩の入れ方・引き返す時刻の3つです。
年齢と体重を入れて、その3つと、子どもに背負わせる重さの目安をまとめて出してみてください。
子どもの登山 歩ける時間・背負える重さ 計算機
年齢と体重から、1日の行動時間・休憩の間隔・引き返す時刻・子どもに背負わせる重さの目安を出します。距離は最後に見てください。
子ども用ザックの本体の重さ
当日の条件(あてはまるものにチェック)チェックが多いほど、目安を削ります
⏱ 歩ける時間の目安
🕒 引き返す時刻
🗺 その山で足りるか
🎒 子どもに背負わせる重さ
ℹ この年齢の考え方
子どもの年齢を選ぶと、目安が表示されます。
計算の根拠:行動時間・休憩間隔・参考距離は、子どもの歩行のエネルギー消費と回復に関する研究の傾向をもとにした筆者の仮置きの目安で、研究から直接導いた数字ではありません。引き返す時刻は「行動時間の半分で折り返す」考え方(下りのほうが時間がかかることがあるため)。大人のコースタイムの1.5〜2倍は、子連れ登山で広く使われている経験則です。重さは体重の10%を出発点とし(15%は約20分の歩行で筋疲労が出なかった線で、数時間の登山では超えない扱い)、下りが長い・荒れた道・行動時間が長い場合にさらに削っています。平均体重は学校保健統計調査(令和2年度)。いずれも一般的な目安で、医学的な断定ではありません。
距離ではなく時間で決める理由
子どもが歩ける距離を実測したデータでいちばん整っているのは、6分間で歩ける距離を測る6分間歩行試験です。ところが22の研究をまとめたレビューでは、報告されている基準値が383mから799mまでばらついていました。平らな廊下を6分間歩く距離ですら、一つの数字には決められないのです。
傾斜も路面もばらばらな山で、年齢の足し算から距離を出せるはずがありません。よく見かける年齢+1kmという目安にも、根拠は見当たりませんでした。
そのうえ、幼い子ほど1mあたりのエネルギー消費がもともと大きく、速く歩かせるほど大人との差が開きます。体格は変えられませんが、速さは大人が変えられます。だから計画は、距離ではなく時間で組みます。
この計算機が出す行動時間・休憩間隔・参考距離は、これらの傾向を親が使える形に翻訳した仮置きの出発点です。研究から直接導いた数字でも、安全の上限でもありません。詳しい根拠は子どもは登山で何km歩ける?にまとめています。
距離の欄を、いちばん最後に置いた理由
結果の中で、距離をいちばん下に、しかも幅を持たせて出しているのは意図的です。
先に距離を決めると、時間が足りなくなったときに「あと少しだから」と子どもを速く歩かせることになります。それが、いちばんやってはいけないことでした。速く歩かせるほど、子どもの負担は大人より大きく増えるからです。
山選びの順番は、こうなります。
- 行動できる時間を決める(休憩も寄り道も写真も全部含める)
- その半分の時刻を、引き返す時刻にする
- 最後に、その時間で歩ける山を探す
引き返す時刻を行動時間の半分に置くのは、子どもでは下りのほうが時間がかかることも珍しくないからです。家を出る前に決めて、家族全員で共有しておいてください。
休憩は「短く、早めに」入れる
大人の休憩の常識は、そのまま持ち込まないほうがいい領域です。
実験室での研究では、疲れる速さそのものは子どもと大人で大きく変わらないのに、戻る速さのほうに差がありました。ただしこれは足首を使った短時間の課題で、山を1日歩いた疲れが数分で戻るという話ではまったくありません。
方向性として受け取ると、休憩の設計はこうなります。大人が10分しっかり休むより、3〜5分の短い休憩を早めに何度も。大人が「まだ休むほどでもない」と感じるタイミングで、子どもには1回入れていい、くらいです。長く座り込ませると、かえって体が冷えて動きたがらなくなります。
休憩が増えるのは、水分と行動食にとっては好都合です。止まったら必ず一口飲ませるを習慣にすると、回数を数えなくて済みます。量の考え方は子どもの登山、水分は体重で決めるにまとめました。
背負わせる重さは、体重の10%が出発点
重さの計算は、体重の10%を出発点にしています。15%という線も見かけますが、あれは20分ほど歩いて筋肉に疲れが出なかったという報告の値です。数時間歩く登山の適正量は、そもそも調べられていません。だから登山では10%を上限と考えて、そこからさらに削ります。
この計算機が削っているのは、次の3つの場合です。
- 下りが長い山:荷物を背負った下りで足にかかるピークの力は、同じ荷物の登りの約1.9倍。しかも力の立ち上がりは登りの約3倍の速さでした
- 荒れた道:足元が不安定なほど、荷物のぶれが姿勢に響きます
- 行動時間が長い日:子どもの訴えは、重さより背負っている時間と強く結びついていました
そして見落としやすいのが、ザック本体の重さも数字に入ることです。子ども用のザックは本体だけで400〜700g前後あります。体重22kgの子の10%は2.2kg。ザックが500gなら、中身に使えるのは1.7kgしかありません。だから中身に使える重さを別に出しています。
対策はシンプルで、山頂で子どもの荷物を親のザックに移してしまうことです。行動食や水は下りまでに減っているので、残りをまとめてしまえば、いちばん衝撃の大きい下りを体だけで降りられます。体重別の具体的なグラム数と根拠は子どもは何キロ背負える?に、下りで膝に何が起きているかは子どもの登山で膝が痛いときにまとめました。
2歳以下は、歩く距離で計画を立てない
年齢の欄で2歳以下を選ぶと、数字ではなく考え方が出ます。この年齢は、自分の足で歩く距離を前提に計画を立てないほうが安全だからです。
行程はチャイルドキャリアや抱っこ紐で親が背負う前提になります。つまり制限になるのは子どもの体力ではなく、親が背負って往復できる体力です。0〜1歳は低酸素・低体温にもっとも弱く、標高2,500m以上は避けるのが目安とされています。年齢と標高の考え方は赤ちゃん・子どもの登山は標高何mまで?に、背負う道具の選び方はチャイルドキャリアの選び方に、背負う親の腰を守る方法はチャイルドキャリア登山で腰を守るにまとめています。
予定どおり歩けなくても、失敗ではありません
最後に、いちばん大事なことを。
目安に届かなかったからといって、その子の体力が足りないわけではありません。同じ年齢でも歩ける量の幅は大きく、睡眠・機嫌・その日の気温で簡単に変わります。
歩けなくなったときの逃げ道を、計画の中に最初から用意しておいてください。抱っこで戻れる距離か、キャリアを持っていくか、来た道を引き返せるか。今日はここまでと決めて引き返した日のほうが、次にまた行きたいと言ってもらえます。
持ち物全体は登山の装備チェックリストで、山頂の気温と服装は山頂の気温は何℃?で、水分と行動食の量は登山の水分・カロリー計算機でそれぞれ出せます。子連れ登山の持ち物と安全管理は子連れ登山の持ち物・安全管理にまとめました。
※この計算機の結果は一般的な目安であり、診断や個別の運動処方ではありません。心臓・呼吸器の持病がある、運動の制限を受けている、発達面で気がかりがある——このいずれかに当てはまるお子さんは、山に連れて行く前にかかりつけ医にご相談ください。山では、歩きたがらない・口数が減る・つまずく回数が増えたときは、予定より引き返すことを優先してください。