「低山でも、岩場や滝があって変化のある山を歩きたい」 「人の少ない、静かな山で1日過ごしたい」

そんな山を探しているなら、三重と滋賀の県境に連なる鈴鹿山脈の釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)を候補に入れてみてください。

結論からお伝えすると、釈迦ヶ岳は沢の大滝と、花崗岩の岩稜と、展望の稜線を1日で巡れる山です。とくに庵座谷(あんざだに)から登ると、落差のある庵座の大滝を、ほぼ貸切で眺められます。今回は朝明渓谷から周回して、距離は8.2km、登りは827mでした。

私は理学療法士(PT)として臨床経験10年以上、山は140座以上を歩いてきました。この記事は、登山を始めた年の2018年10月20日に、ソロで歩いた日帰り周回の記録です。下山中の沢沿いで、転倒して頭を打った登山者に出会いました。そのとき何を確かめ、何をしたかも書きます。

読み終えるころには、釈迦ヶ岳をどのルートで歩き、沢沿いのどこで気を引き締めるか、自分の計画に落とし込めるはずです。

釈迦ヶ岳 庵座谷の庵座の大滝 岩壁を細く長く落ちる滝 鈴鹿山脈 朝明渓谷から日帰り ヤマカルテ

そもそも釈迦ヶ岳はどんな山?──低山なのに、滝と岩稜の両方がある山

釈迦ヶ岳は、鈴鹿山脈のほぼ中央にある標高1,092mの山です[2]。鈴鹿セブンマウンテンのひとつに数えられます。三重県側から見た山の姿が、お釈迦さまの寝姿に似ていることから名づけられたといわれます[1][2]。

少し変わっているのが、山頂です。最高点と三角点が、少し離れた別の場所にあります。最高点のほうが5mほど高いのですが、釈迦ヶ岳の標高として一般に記されるのは、三角点の1,092mです[2]。現地の看板では、最高点が1,097.1m、三角点が1,092.2mと書かれていました。

なぜ、いちばん高い場所が山頂にならないのでしょうか。三角点は、もともと地図をつくるための位置の基準として置かれた点です。国土地理院によると、明治時代に全国の地図をつくるために設置が始まり、山の頂上付近や見晴らしのよい場所などに置かれています[4]。つまり三角点は、その山でいちばん高い場所を示す印ではありません。そのため、最高点と三角点の位置がずれる山があり、登山者のあいだでは三角点のある場所が山頂として扱われることが多くなります。釈迦ヶ岳の三角点が、なぜ今の位置に置かれたのかまで説明した資料は、見つけられませんでした。

山頂の稜線からは、濃尾平野や伊勢湾、鈴鹿の山並みを見渡せます。登山の起点は、三重県菰野町(こものちょう)の朝明渓谷(あさけけいこく)です。庵座コース、松尾尾根コース、羽鳥峰(はとみね)コースなどの登山道が出ています[1]。

体への負担という点では、こんな特徴があります。

  • 庵座谷は沢沿いの道:滝の横を巻いて登り、途中で沢を渡る。濡れた岩が多く、足元が安定しない
  • 中尾根には小さなキレットがある:キレット(稜線が深く切れ落ちた場所)は短いが、高度感がある。風の強い日は横から体をあおられる
  • 三重県側はガレ場が多い:花崗岩(かこうがん)の岩やザレた斜面が続き、下りでは足を滑らせやすい
  • 周回の最後は沢沿いの下り:疲れがたまった後半に、濡れた岩の上を歩く区間がくる

それでも私がこの山を好きなのは、登山者が比較的少なく、静かな山歩きを楽しめるからです。とくに庵座の大滝は、私が訪れたときは、ほとんど貸切でした。三重県側の花崗岩の岩稜には、低山ながらアルプスのような魅力があります。一方で、庵座谷は大滝のある沢のルートとしても楽しめます。ハト峰を回る周回なら、ガレ場だけでなく、草原や不思議な岩の景色まで、さまざまな景色に出会えます。

この記事は、その釈迦ヶ岳を、庵座谷で登り、猫岳とハト峰を回って下った2018年秋の記録です。

コースとプラン|朝明渓谷起点・庵座谷で登りハト峰で下る周回

項目データ
山・標高釈迦ヶ岳 1,092m(三角点。最高点は約5m高い)[2]
エリア・起点鈴鹿山脈・三重県菰野町の朝明渓谷(有料駐車場)[2]
ルート朝明渓谷 → 庵座谷 → 庵座の大滝 → 中尾根(キレット)→ 釈迦ヶ岳最高点 → 釈迦ヶ岳山頂(三角点)→ 猫岳 → ハト峰(羽鳥峰)→ 沢沿いの道 → 朝明渓谷(反時計回りの周回)
距離・累積標高8.2km・登り827m/下り825m(私のYAMAPの記録)[3]
標準タイム4時間42分(YAMAPがこの記録のルートから算出した値)[3]
今回の行程2018年10月20日・日帰り・ソロ。行動4時間23分(休憩1時間1分を含む)[3]
注意したい区間庵座の大滝の滝つぼへ降りる箇所・中尾根のキレット・ハト峰から下る沢沿いの濡れた岩
登山道の状況観光三重は「登山道は崩壊の恐れがあるため、最新情報をご確認ください」と案内している[1]。問い合わせ先は菰野町観光産業課(059-391-1129)[1]

この時期・このルートを選んだ理由

登山を始めた年の秋でした。高い山のグリーンシーズン(雪のない時期)が終わり、当時はまだ冬山をやっていなかったので、雪が来る前に低山を登り納めておこうと考えました。

鈴鹿山脈では、まだ御在所岳しか登ったことがありませんでした。せっかくなら、鈴鹿セブンマウンテンのほかの山にも挑戦してみたい。そこで選んだのが釈迦ヶ岳です。

近場の低山なので、当日の朝に起きてから天気予報を確かめました。晴れ間は持ちそうでしたが、風は強めの予報です。それでも、このルートは風にさらされる稜線を歩く時間が短く、強風で危なくなる箇所は少なめだと判断して、行ってみることにしました。

当時はまだソロで山に行くことが少なく、よく一緒に登っていた先輩を誘いました。ところが、今回はモチベーションが上がらないとのことで断られ、ソロで向かうことになりました。

ルートは、事前に決めておきました。朝明渓谷の登山者用の駐車場に停め、ややマイナーなほうの庵座谷ルートで登ります。山頂からは猫岳とハト峰を経て、朝明渓谷へ戻る反時計回りの周回です。

ひとつ気がかりだったのが、膝です。この1か月ほど前の山行で、膝の外側に痛みが出ていました。自分で腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)を疑った痛みで、少なくなったものの、まだ治りきっていない時期です。この日はテーピングをして歩きました。

実際に歩いた行程

時刻地点
08:31朝明渓谷の駐車場 出発
10:22〜10:30釈迦ヶ岳 最高点
10:33〜10:40釈迦ヶ岳 山頂(三角点)
10:57〜11:10猫岳
11:58〜12:07ハト峰
12:40旧千種街道登山口
12:55朝明渓谷の駐車場 着

出発から最高点までの1時間51分には、庵座の大滝で過ごした時間も入っています。

どんな人に向いているか

このコースは、登山を始めたばかりの人向けではありません。体力と技術に分けると、こうなります。

  • 体力面:距離は8km余り、登り下りとも800m台。日帰りで標高差800m前後を登り下りした経験があれば、目安になる
  • 技術面:体力より、こちらのほうが求められる
    • 道迷い:低山らしく、道が分かりづらい箇所が多い。ハト峰は分岐が集まる場所でもある。地図とGPSで現在地を確かめながら歩ける人向け
    • 沢沿いの濡れた岩:庵座谷も、ハト峰からの下りも、沢沿いを歩く区間がある
    • キレット:短いが、高度感がある。風の強い日は、横風にあおられない体勢で慎重に通過する
    • 庵座の大滝の滝つぼ:近づくには登山道から外れて谷へ降りる必要があり、ルートを見極められる人に限られる(詳しくは次の章)
  • 子連れ・登山復帰の直後の人:子どもと歩くなら、自分の足で岩場や沢を越えられる年齢になってから。チャイルドキャリアを背負って歩く道ではない。復帰の直後なら、まずは整備された道の山で、脚と勘を戻してからにする

朝明渓谷〜庵座の大滝:貸切の大滝と、滝つぼへ降りる前の判断

朝8時半ごろ、朝明渓谷の駐車場を出発しました。

最初はキャンプ場の中を通っていきます。キャンプ場の中は道がいくつにも分かれていて、決まった登山道があるわけではありません。私が歩いたときは、どの道を通っても同じ方面へ抜けられました。迷ったら、場内の案内看板で行き先を確かめて進んでください。

場内には、こんな案内看板があります。ここで、中尾根ルートと庵座谷ルートに分かれます。

釈迦ヶ岳 朝明渓谷の中尾根経由釈迦ヶ岳登山口の案内看板 庵座谷と中尾根の分岐 ヤマカルテ

登山道は整備されているほうですが、低山らしく道が分かりづらい箇所が多いです。道迷いに注意して、慎重に進みます。

釈迦ヶ岳 庵座谷ルートの岩混じりの登山道 道が分かりづらい樹林帯 ヤマカルテ

しばらく進むと、目の前に庵座の大滝が見えてきました。

釈迦ヶ岳 庵座谷の奥に見えてきた庵座の大滝 ヤマカルテ

登山道は、この滝の右側を巻くように上流へ上がっていきます。そのため、滝つぼに近づくには、一度登山道を離れて谷へ降りる必要があります。

一見分かりづらいのですが、残置ロープ(以前の登山者が残していったロープ)があり、クライムダウン(岩を後ろ向きに手足を使って下ること)できる箇所が分かりました。そこから降りていきます。

正しく沢へ降りられれば、目の前に小さな滝があり、その左側に鎖場があります。ここを登っていけるようになっています。下の写真は、別の日(2021年5月)に撮ったものです。

釈迦ヶ岳 庵座谷の小さな滝と滝つぼ 左側の鎖場を登る同行者 2021年5月撮影 ヤマカルテ

近づくと、迫力のある大滝を間近に望めます(2021年5月撮影)。

釈迦ヶ岳 庵座の大滝を滝つぼ近くから見上げた姿 2021年5月撮影 ヤマカルテ

別の日(2019年11月)には、滝のそばの岩場を、無理のない範囲で少し登ってみたこともあります。

釈迦ヶ岳 庵座の大滝の横の岩場を登る筆者 紅葉の時期 2019年11月撮影 ヤマカルテ

岩場からは、巻き上がる水しぶきや、

釈迦ヶ岳 庵座の大滝の岩場から見上げた水しぶきと紅葉 2019年11月撮影 ヤマカルテ

滝つぼを見下ろせました。

釈迦ヶ岳 庵座の大滝の岩場から見下ろした滝つぼ 2019年11月撮影 ヤマカルテ

庵座の大滝〜釈迦ヶ岳山頂:ガスの稜線と、横風のキレット

大滝を楽しんだあとは、登山道に戻り、道なりに大滝の上へ上がっていきます。

上流は沢沿いに進み、途中でも大小さまざまな滝を眺められました。

釈迦ヶ岳 庵座谷の上流で見た段になって落ちる滝と筆者 ヤマカルテ

しばらく進むと、中尾根に合流するため、谷を離れて中尾根の西側の斜面を登っていきます。

この日の山頂は、ガスに飲みこまれていました。稜線の上が白く見えます。

釈迦ヶ岳 ガスに覆われた稜線と風になびく草 庵座谷から中尾根へ ヤマカルテ

風も、予報どおり強く吹いていました。ここまでは谷沿いの樹林帯で感じなかった風を、ここから急に強く感じるようになります。それでも、体を持っていかれるほどの強さはなく、突風もなかったので、そのまま登っていきました。

中尾根の上には、小さいながらキレットがあり、少しだけ高度感があります。横風に体を持っていかれないよう、ここは慎重に通過しました。

この日は、このあたりで写真を撮っていません。下の写真は、別の日(2021年5月)に撮ったキレットです。

釈迦ヶ岳 中尾根のキレット 切れ落ちた岩壁の横を通る登山道 2021年5月撮影 ヤマカルテ

山頂側から振り返ると、こんな様子です(2019年11月撮影)。

釈迦ヶ岳 中尾根のキレットを山頂側から振り返った様子 岩の細尾根を登る登山者 2019年11月撮影 ヤマカルテ

キレットを過ぎると、目立った危険箇所はなく、稜線歩きになります。

キレットを過ぎて登りきったところにあるのが、最高点の看板です(2021年5月撮影)。釈迦ヶ岳でいちばん高い場所はここですが、山頂とされる三角点は、もう少し先にあります。三角点は地図づくりの基準として置かれた点で、いちばん高い場所の印ではないためです(最初の章で説明しています)。

釈迦ヶ岳最高点1097.1mの看板 三角点と中尾根・松尾尾根を示す道標 2021年5月撮影 ヤマカルテ

ここから稜線を少し歩くと、山頂(三角点)に着きました。このころにはガスが抜けてくれて、眺望が開け、濃尾平野が見渡せました。

釈迦ヶ岳の山頂 三角点の石柱と1092.2mの標識 奥に広がる濃尾平野 ヤマカルテ

釈迦ヶ岳山頂〜ハト峰:しなる木々と、岩で描いた地上絵

山頂から少しだけ来た道を戻り、分岐からハト峰の方面を目指します。

釈迦ヶ岳 山頂近くの分岐の道標 松尾尾根・ハト峰・庵座谷方面 ヤマカルテ

この区間は眺望も開け、伊勢湾が見えていました。

釈迦ヶ岳からハト峰へ向かう稜線から見た鈴鹿の山並みと伊勢湾方面 ヤマカルテ

さきほど庵座谷から登ってきた西側の斜面や、キレットの部分も、引きで見られました。

釈迦ヶ岳の稜線から引きで見た中尾根の岩稜とキレット 庵座谷から登った西側の斜面 ヤマカルテ

このあたりの木々は、どれも谷側へしなるように生えていました。それでも、しっかりと立っています。自然の力強さと、その自然がつくる不思議な景色に、面白さを感じました。

釈迦ヶ岳の稜線で谷側へしなるように生えた木々 強い風を受け続けた樹形 ヤマカルテ

少し歩くと、猫岳に着きました。

猫岳山頂1,057.7mの県境稜線縦走路の看板 釈迦ヶ岳からハト峰への稜線 ヤマカルテ

猫岳には猫岩があり、慰霊のプレートが取りつけられていました。

猫岳の猫岩に取りつけられた慰霊のプレート 釈迦嶽と羽鳥峯の方角が刻まれている ヤマカルテ

ここからは、少しずつ下りながらハト峰を目指します。途中には、ややザレた区間や、

釈迦ヶ岳 猫岳からハト峰へ下る途中のザレた斜面と花崗岩の岩 ヤマカルテ

草原のような区間がありました。

釈迦ヶ岳 猫岳からハト峰へ向かう途中の草原のような区間と伊勢湾方面の眺め ヤマカルテ

この日は、伊勢湾や御在所岳などがずっと見えていて、景色の移り変わりに飽きずに歩けました。

そして、ハト峰(羽鳥峰)に着きました。岩峰の上に看板が立っています。

ハト峰(羽鳥峰)の花崗岩の岩峰と山頂の看板 ヤマカルテ

この位置からは、真下のザレ場が見渡せます。そこには、登山者たちの慣習として岩を並べて描いた、さまざまな形がありました。それを上から眺められます。

ハト峰から見下ろした白いザレ場 岩を並べて描かれた形 ヤマカルテ

誰が並べ直すのか、行くたびに形が変わっています。これを見るのも、楽しみのひとつです。下は、別の日(2021年5月)に見たときの形です。

ハト峰の下のザレ場に岩を並べて描かれた別の形 2021年5月撮影 ヤマカルテ

ここには、方角を刻んだ石の案内板もあります。

ハト峰(羽鳥峰峠)の石の案内板 朝明・御在所・釈迦ヶ岳の方角を示す ヤマカルテ

ふつうの立て看板もあります。ここは分岐が集まる場所なので、間違えないように進む必要があります。

ハト峰(羽鳥峰峠)の道標 釈迦ヶ岳・朝明方面の分岐 ヤマカルテ

朝明渓谷へ下る道は、2つのルートに分かれています。私は毎回、短いほうのルートしか歩いたことがなく、もう一方の道の状態は分かりません。どちらを下るにしても、道標の行き先と地図を照らし合わせてから進んでください。

ハト峰〜朝明渓谷:沢沿いで、頭を打った登山者に出会う

短いほうのルートは、沢沿いを下っていきます。濡れた岩に足を滑らせないよう、注意が必要な区間です。下の写真は、別の日(2021年5月)に撮ったものです。

ハト峰から朝明渓谷へ下る沢沿いの岩の道を下る同行者 2021年5月撮影 ヤマカルテ

この日、このルートの上で、けがをした登山者に出会いました。

その方は、ひとりで沢沿いに横たわっていました。声をかけると、濡れた岩に足を滑らせて転んでしまったとのことです。ソロではなく同行者がいたようですが、そこは携帯電話の電波が届かない場所でした。同行者は、救助を呼ぶため、電波の届く場所まで移動していたそうです。

意識の状態を確かめると、受け答えは正常でした。ただ、耳から出血していました。頭を強く打っている可能性が高く、むやみに動かしてはいけないと考えました。

沢沿いは体が冷えます。持っていた救急セットからアルミシート(エマージェンシーシート)を取り出し、使ってもらいました。

本人からは「大丈夫なので、気にせず進んでください」と言われました。急に容体が変わるおそれもあります。ただ、同行者が離れた時間からすると、そろそろ戻ってきそうでした。そこで、様子を見ながら進むことにしました。

少し下ったところで、同行者の方が、救助の人と一緒に上がってくるところに出会いました。意識の状態と、アルミシートを渡したことを伝えて、その場を離れました。

ここまでが、この日の私の行動です。結果として、すぐに救助の人へ引き継げました。ただ、頭を打った人をひとりにする時間は、短いほど安全です。いま同じ場面に出会ったら、救助の人に引き継ぐまで付き添うことを第一に考えます。一般的な対応は、次の補足にまとめます。

ここからは、とくに危険な箇所もない区間を歩き、朝明渓谷に戻りました。

風のリスクを気にしながら向かった山行でした。ところが、いちばん身に迫って感じたのは、天気に関係なくそこにある、沢沿いの転倒のリスクでした。

釈迦ヶ岳を計画するなら(PTの実用メモ)

膝は、テーピングをして支障なく歩けた

この日は、腸脛靭帯炎を疑った膝の外側の痛みが治りきらないまま、テーピングをして歩きました。テーピングのおかげか、膝に特に支障はありませんでした。行程が短かったので、途中で貼り直すこともしていません。

ただし、これは私の膝と、この日の短い行程での話です。支障が出なかったのがテーピングのおかげなのか、行程の短さのおかげなのかは、切り分けられません。テーピングは、痛みの原因そのものを治すものではありません。痛みが残っている時期は、距離と下りの量が少ない山を選ぶほうが安全です。腸脛靭帯炎の原因と対処は、登山で膝の外側が痛い|腸脛靭帯炎の原因と対処に書いています。このとき膝を痛めたのと同じ時期の山行は、甲斐駒ヶ岳の日帰り記録にも書いています。

沢沿いの下りは「乾いた岩を選び、足裏全体で」

釈迦ヶ岳の周回は、登りも下りも沢沿いを歩きます。濡れた岩の上では、つま先やかかとだけで着地すると、靴底が岩に触れる面積が小さくなり、足がずれやすくなります。この周回の沢沿いでは、次のように足を置いてください。

  • 濡れた岩、苔のついた岩、落ち葉の上は避けて、乾いた岩の平らな面を選ぶ
  • 歩幅を小さくして、足裏全体を置くように着地する
  • 下りは、手で岩をつかめる場所ではつかみ、3点支持(両手両足のうち3か所で体を支える)で一歩ずつ下りる

詳しい歩き方は、濡れた岩・木道で滑らない歩き方にまとめています。

救急セットに、アルミシートを1枚

この日、私が持っていたアルミシートは、自分のためではなく、けがをした人のために役に立ちました。沢沿いは、動けなくなった人の体温を一気に奪う場所です。

  • アルミシート(エマージェンシーシート)は軽く、救急セットに入れておいても荷物にならない
  • 電波が届かない場所が多い山では、救助が来るまでに時間がかかる。そのあいだ体を冷やさない手段を持っておく

シートの選び方と使い分けはツェルトとエマージェンシーシートの違い、救急セットの中身は登山の救急セット(ファーストエイドキット)の中身にまとめています。

まとめ:釈迦ヶ岳は、静かな大滝と岩稜を1日で巡れる山

4コマでおさらいします。

釈迦ヶ岳(鈴鹿)の日帰り周回を4コマで紹介 冬の前の登り納めに風の予報を確認、貸切の大滝と横風のキレット、沢で頭を打った人に出会ったら意識と呼吸を確かめて保温、怖いのは天気より沢の転倒 ヤマカルテ

  • 釈迦ヶ岳(1,092m)は、鈴鹿山脈のほぼ中央にある鈴鹿セブンマウンテンのひとつ。最高点と三角点が分かれていて、最高点のほうが約5m高い
  • 今回は朝明渓谷から庵座谷で登り、猫岳とハト峰を回って下る周回で、距離8.2km・登り827m
  • 庵座谷では、ほぼ貸切の庵座の大滝を眺められる。滝つぼへ降りるのは、ルートを見極められるときだけ
  • 中尾根のキレットは短いが、風の強い日は歩幅を小さく、重心を低くして通過する
  • ハト峰では、ザレ場に岩で描かれた形を上から眺められる。分岐が集まる場所なので道を間違えない
  • 下りの沢沿いは、濡れた岩で転びやすい。この日は、頭を打った登山者に出会った
  • 頭を打った人に出会ったら、意識と呼吸を確かめ、すぐに通報し、むやみに動かさず、体を冷やさない。できれば救助の人に引き継ぐまで付き添う

静かな大滝で水音を聞き、花崗岩の岩稜を越えて、ハト峰の不思議な景色に出会う。そんな1日を過ごしたくなったら、朝明渓谷から釈迦ヶ岳を歩いてみてください。

参考文献

  1. 観光三重(三重県観光連盟). 釈迦ケ岳 シャカガタケ(2026年10月30日閲覧). https://www.kankomie.or.jp/spot/1625
  2. 観光三重(三重県観光連盟). 一味違う登山を楽しみたい人必見!釈迦ヶ岳を周回する絶景ルートを紹介(2026年10月30日閲覧). https://www.kankomie.or.jp/report/1480
  3. yosshy. 釈迦ヶ岳・猫岳・羽鳥峰(2018年10月20日の活動日記). YAMAP. https://yamap.com/activities/2548915
  4. 国土地理院. 三角点とは(2026年10月30日閲覧). https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/sankaku-toha.html
  5. NHS. Head injury and concussion(2026年10月30日閲覧). https://www.nhs.uk/conditions/head-injury-and-concussion/