「長いコースは歩けないけれど、大きな富士山を眺めたい」 「疲れが残っている週末でも、満足できる山はないだろうか」
そんな日の行き先を探しているなら、山梨県・本栖湖のほとりにそびえる竜ヶ岳(りゅうがたけ)を候補に入れてみてください。
結論からお伝えすると、竜ヶ岳は長いコースではないのに、富士山の展望は一級品の山です。本栖湖から周回して距離は6.4km、登りは約600m。標準タイムで歩いて約4時間に、休憩の時間を足して計画します。稜線に出た瞬間から、裾野まで見渡せる富士山がずっと目の前にあります。
私は理学療法士(PT)として臨床経験10年以上、山は140座以上を歩いてきました。この記事は、2021年10月24日に、当時の彼女(今の妻)と2人で歩いた日帰り周回の記録です。前日に長いコースを歩いた疲れが残る中で、この山を選んだ理由もあわせて書きます。
読み終えるころには、竜ヶ岳を自分の山行計画に組み込めるかどうか、判断がつくはずです。

そもそも竜ヶ岳はどんな山?──富士山を眺めるための特等席
竜ヶ岳は、富士五湖のひとつ本栖湖の南岸にそびえる標高1,485mの山です。山梨百名山のひとつで、年末年始には富士山の山頂から太陽が昇るダイヤモンド富士の名所として知られています[1]。名前は、本栖湖にすむ竜の言い伝えに由来するといわれます。
ちなみに、私が普段よく歩く三重・滋賀の鈴鹿山脈にも、同じ名前の竜ヶ岳があります。こちらは「富士山が見える方の竜ヶ岳」です。
体への負担という点では、こんな特徴があります。
- 標高差は約600m:本栖湖畔から山頂まで、日帰りで無理なく歩ける大きさ。そのぶん、前半の樹林帯は景色の変化が少なく、黙々と登る時間が続く
- 稜線から先はゆるやか:笹原の道を、富士山を眺めながら歩く。息が上がりにくく、足を止めて景色を見る余裕がある
- 下りは長い一本調子:山頂から湖畔まで、標高差約600mを下り続ける。疲れていると、後半で太ももの前側に負担がたまりやすい
- 冬は雪と凍結の山になる:ダイヤモンド富士の時期は、暗いうちに登る人が多く、登山道も凍る。秋とは別の山と考えたほうがよい
それでも私がこの山を好きなのは、富士山が裾野までまるごと見えるからです。麓から見上げる富士山は、手前の山や建物に裾野が隠れがちです。竜ヶ岳の稜線からは、山頂の雪から、駿河湾へと流れる裾野の線まで、さえぎるものなく見渡せます。笹原の稜線を歩く気持ちよさも、この山ならではです。
もうひとつ、個人的な理由もあります。妻と付き合うきっかけになったのが、一緒に登った富士山でした。当時はまだ友人どうしで、そのときの記録は富士山プリンスルートの1泊2日体験記に書いています。夫婦ともに思い入れのある富士山を、真正面から眺めるのにこれ以上の山はありません。
この記事は、その竜ヶ岳を、湖畔ルートで登って石仏ルートで下った秋の記録です。
コースとプラン|本栖湖起点・湖畔ルートで登り石仏ルートで下る周回
| 項目 | データ |
|---|---|
| 山・標高 | 竜ヶ岳 1,485m(山梨県・本栖湖の南岸) |
| 起点 | 本栖湖キャンプ場のそばの駐車場(登山口にいちばん近い駐車場は冬季閉鎖。元日前後の数日だけ臨時開放されることがある)[3] |
| ルート | 本栖湖キャンプ場 → 湖畔登山口 → 湖畔ルート → 稜線 → 竜ヶ岳 → 石仏ルート → 展望台(見晴台・石仏と東屋がある)→ 本栖湖キャンプ場(周回) |
| 距離・累積標高 | 6.4km・登り610m/下り611m(私のYAMAPの記録)[2] |
| 標準タイム | 3時間47分(YAMAPがこの記録のルートから算出した値)[2] |
| 今回の行程 | 2021年10月24日・日帰り・2人。行動4時間18分(休憩1時間27分を含む) |
| ダイヤモンド富士 | 12月上旬と、12月下旬〜1月上旬[1] |
| アクセス | 本栖湖まで、中央自動車道 河口湖ICから約30分、新東名高速道路 新富士ICから約50分[1] |
この日・この形にした理由
天気は穏やかで、本当は北アルプスの新雪の山に行くつもりでした。ところが前日に、距離20km・累積標高1,900mの山を歩いたばかり。疲れが残っていて、どうにもやる気が出ませんでした。
それなら、いつものように地元の鈴鹿をうろつこうか。そう考えたところで、ふと思い立ったのが「鈴鹿じゃない方の竜ヶ岳」です。ちょうど休みが重なっていた彼女を誘い、山梨旅行を兼ねることにしました。
朝6時に岐阜を出発する、のんびりスケジュールです。2人とも2連休だったので、行きの車の中で河口湖の宿を予約して、1泊2日の旅行に決めました。
実際に歩いた行程
| 時刻 | 地点 |
|---|---|
| 10:23 | 本栖湖キャンプ場 出発 |
| 10:34 | 湖畔登山口 |
| 11:59 | 竜ヶ岳 山頂(約50分滞在) |
| 12:50 | 山頂 発(石仏ルートで下山) |
| 13:22 | 展望台(見晴台)(約35分滞在) |
| 13:57 | 展望台 発 |
| 14:41 | 本栖湖キャンプ場 着 |
どんな人に向いているか
- 雪のない時期なら、日帰り登山に慣れてきた人が歩ける山。今回歩いた秋には、鎖場などの難所はなかった。稜線は笹原のゆるやかな道
- ただし標高差は約600mある。長い登りと下りを一日で歩ける体力が「今」あるかを、出かける前に考える
- 私は、前日の疲れが残る日の行き先として選んだ。疲れが強い日は、山に行かずに休むのも立派な選択肢
- ダイヤモンド富士の時期は別の山と考える。暗いうちに凍った道を歩くことになるので、冬山の装備と経験が要る(詳しくは最後の章)
本栖湖〜竜ヶ岳山頂:樹林帯を抜けた先に、いきなり富士山
新東名高速道路を走っていると、さっそく富士山が見えてきました。山頂はすでに白く、気分が一気に上がります。

本栖湖に着いたのは10時前。駐車場が空いているか心配でしたが、この日は拍子抜けするほど余裕がありました。この時期、ほかの登山者は紅葉の山や、新雪の高い山へ向かったのかもしれません。
登りは湖畔ルートから。しばらくは樹林帯を黙々と登ります。

登り始めてまもなく、「ミズナラの巨木」と書かれた木が現れました。幹の中がぽっかりと空洞になっていて、大人1人がすっぽり収まるほどの大きさです。

ここから先は、景色の変化が少ない登りが続きます。富士山が見える瞬間だけを楽しみに、ひたすら足を運びました。

1時間ほど登って稜線に出ると、突然、目の前に大きな富士山が現れました。山頂に雪をかぶった、これぞ富士山という姿です。

ここからは、気持ちのよい笹原の道です。富士山を眺めながら歩き、「来てよかった」と喜びをかみしめました。

麓から見る富士山では、なかなか見られない景色もあります。駿河湾のほうへ流れていく裾野まで、しっかり見渡せるのです。

富士山に見とれながら歩くと、10分ほどで山頂に着きました。

竜ヶ岳山頂:富士山と南アルプスを独り占めするような大展望
山頂はだだっ広く、休憩にはもってこいの場所です。思い思いの場所に座って、皆さん富士山を眺めていました。

急に決めた山行だったので、特別な山ごはんは用意していません。お昼はカップヌードルです。かわいいふただったので、富士山と一緒に撮りました。

カップ麺をすすって、のんびり過ごします。カメラをズームレンズに付け替えて富士山を撮ると、ケーキに塗ったクリームのような雪がくっきり見えました。

さらにズームすると、剣ヶ峰の気象観測所まではっきり見えます。今回の記録は、しつこいくらいに富士山づくしです。

富士山以外にも目を向けてみると、北の方角に南八ヶ岳が見えました。

さらに開けた場所を探してキョロキョロすると、南アルプスもずらりと並んでいます。






アサヨ峰と鳳凰三山、農鳥岳・間ノ岳・北岳、塩見岳、荒川三山、赤石岳、そして笊ヶ岳(ざるがたけ)と聖岳。南アルプスの山々も、もう白くなり始めていました。富士山を見に来て、南アルプスまでこれだけ見えるのは、ちょっと得をした気分です。
石仏ルートで下山:展望台まで続く富士山ビュー
下りは石仏ルートです。再び笹原の道を戻っていきます。

石仏ルートは、山頂から展望台までずっと富士山を見ながら下れるのが最高です。今回は花をあまり見かけませんでしたが、途中でリンドウを見つけました。花の中をのぞくと、アリが1匹もぐりこんでいます。

展望台(見晴台)に着きました。石仏と東屋(あずまや)のある、ひらけた場所です。

ここで最後の富士山を楽しみながら、のんびり過ごしました。開けていて、何度もシャッターを切ってしまいます。

突き抜けるような青空と富士山。この組み合わせを見るために登ってきたようなものです。

調子に乗って、シルシアーサナ(ヨガの頭立ちのポーズ)で、上下逆さまの富士山も楽しみました。

そうしてふざけているうちに、少しずつ雲が湧いてきて、富士山の頭が隠れました。それを合図に、下山を再開します。

少し下ると、ゴールの本栖湖が見えてきました。

あっという間に下山です。手軽に楽しめて、いい山でした。

下山後のごほうび:部屋から富士山が見える河口湖の宿
下山後は河口湖へ移動して、行きの車の中で予約した「若草の宿 丸栄」へ。部屋に露天風呂がついていて、湯船から富士山が眺められる宿です。

風呂上がりのビールも、もちろん富士山と一緒に。最後まで富士山づくしの旅になりました。

竜ヶ岳を計画するなら(PTの実用メモ)
疲れが残る日は、「短くて景色のよい山」に切り替える
この日、私は前日の疲れを理由に、北アルプス行きをやめて竜ヶ岳に切り替えました。結果として、この日も翌日以降も、脚や膝に気になることは何も出ませんでした。
ただし、これは私の脚とこの日の条件での話です。疲れているときは、本人が思うより足元の反応が落ちていることがあります。行き先を短いコースに替えるのは、負担を減らす選択肢のひとつですが、疲れが強い日は山に行かずに休むのも、同じくらい大切な判断です。登山復帰の途中の人や、子どもを連れて歩く人は、私の行程を基準にしないでください。
下りは長い一本調子。歩幅を小さく
山頂から本栖湖までは、標高差約600mを下り続けます。今回歩いた秋には難所はありませんでしたが、同じリズムの下りが長く続くと、太ももの前側に負担がたまります。
歩幅を小さくして、着地のたびにブレーキをかけすぎないのが基本です。くわしくは登山の「下り」で膝を守る歩き方にまとめています。
ダイヤモンド富士の時期は、冬山の準備で
竜ヶ岳のダイヤモンド富士は、12月上旬と、12月下旬〜1月上旬が目安です[1]。山頂か途中の展望台かなど、見る場所によって時期は変わるので、出かける前に確かめてください。富士山の山頂から朝日が昇るのを見るには、暗いうちに登り始めることになり、登山道は凍っていることが多くなります。
- 冬は湖畔ルートの北側に雪が残りやすく、凍っていることが多い。環境省のレンジャーは、初めての人やペースに不安がある人には石仏ルートから登ることを勧めている[3]。この記事の「湖畔ルートで登る周回」を、冬にそのまま当てはめない
- 登山口にいちばん近い駐車場は冬季閉鎖される。元日前後の臨時開放の有無は年によって変わるので、事前に確認する[3]
- 足元の凍結には、チェーンスパイクなどの滑り止めを用意する。選び方はチェーンスパイクと軽アイゼンの違いを参考に
- 暗いうちに歩くので、ヘッドランプと予備電池は必ず持つ。選び方は登山用ヘッドランプの選び方に
- 日の出を待つ山頂は、風が当たると体が一気に冷える。行動中には着ない防寒着を、別に1枚持っていく
秋の竜ヶ岳を歩いた私の記録は、冬の竜ヶ岳にはそのまま当てはまりません。冬に行くなら、冬山として計画を立て直してください。
まとめ:竜ヶ岳は、短い時間で富士山をまるごと味わえる山
4コマでおさらいします。

- 竜ヶ岳(1,485m)は本栖湖の南岸にそびえる山梨百名山。年末年始のダイヤモンド富士でも知られる
- 本栖湖から湖畔ルートで登り、石仏ルートで下る周回で、距離6.4km・登り約600m
- 前半は樹林帯の黙々とした登り。稜線に出た瞬間、目の前に富士山が現れる
- 山頂は広く、富士山の裾野から南アルプスまで見渡せる
- 石仏ルートは、山頂から展望台までずっと富士山を見ながら下れる
- 私は、前日の疲れが残る日の行き先として選んだ。冬は冬山として準備し、湖畔ルートの凍結に注意する
長いコースを歩く元気がない日でも、竜ヶ岳なら大きな富士山が待っています。週末の行き先に迷ったら、本栖湖のほとりから登ってみてください。
参考文献
- 国土交通省 関東地方整備局. 関東の富士見百景【111】県営本栖湖駐車場周辺(山梨県). https://www.ktr.mlit.go.jp/chiiki/fujimi0111.html
- yosshy. 富士山が見える方の竜ヶ岳(2021年10月24日の活動日記). YAMAP. https://yamap.com/activities/13867903
- 環境省 関東地方環境事務所. アクティブ・レンジャー日記「竜ヶ岳からのダイヤモンド富士」(2023年1月13日). https://kanto.env.go.jp/blog/page_00083.html