「午前中に用事がある日でも、午後から登れる山はないだろうか」 「短い時間でも、ちゃんと山頂の景色で満足できる山を知りたい」

そんな山を探しているなら、三重県鈴鹿市の入道ヶ岳(にゅうどうがたけ)を候補に入れてみてください。

入道ヶ岳は、半日あれば、草原の山頂と360°の眺望まで味わえる山です。標準のコースタイムは、往復で約3時間40分です。山頂には椿大神社(つばきおおかみやしろ)の大鳥居が立ち、ススキの草原の向こうに、鈴鹿の山並みや伊勢湾が広がります。

私は理学療法士(PT)として臨床経験10年以上、山は140座以上を歩いてきました。この記事は、2020年11月1日、仕事を終えてから13時45分に歩き始めた日帰りの記録です。この日の入道ヶ岳で、鈴鹿セブンマウンテンの7座を登り終えました。なお、この日は時間に追われて小走りで歩いたので、私の行動時間は一般的な目安になりません。

午後から登るなら、時間の組み立てが何より大切です。いつ引き返すか、暗くなったら何を使うか。この日の判断も、そのまま書きます。

読み終えるころには、入道ヶ岳をどのコースで、何時から歩くか、自分の計画に落とし込めるはずです。

入道ヶ岳の山頂に立つ椿大神社の大鳥居とススキの原に差す西日 鈴鹿セブンマウンテン 北尾根から午後の日帰り登山 ヤマカルテ

そもそも入道ヶ岳はどんな山?──山そのものが神社の御神体、山頂は草原

入道ヶ岳は、三重県鈴鹿市にある標高906mの山で、鈴鹿セブンマウンテンのひとつです[1]。セブンマウンテンのなかでは最も南にあり、7座のうちただひとつ、標高が1,000mに届きません。

山麓の椿大神社は猿田彦大神(さるたひこおおかみ)を祀る神社で、入道ヶ岳は、山そのものがその御神体として崇められてきました[2]。そのため山頂には白い大鳥居が立ち、少し離れた最高点(915m)には奥宮があります[3]。

山頂一帯はススキや笹に覆われた広い草原で、360°の展望が開けます[1]。

体への負担という点では、こんな特徴があります。

  • 北尾根コースは序盤から急な石段:登山口の鳥居から、いきなり長い石段が続く。その先も、段差の大きい急登がしばらく続く
  • 段差の大きい急登は、息が上がりやすい:一歩ごとに太ももで体を持ち上げる登り方になり、心拍数が上がりやすい
  • 稜線に出ると歩きやすい:北の頭(きたのあたま)から先は、低木の尾根と草原になり、傾斜もゆるむ
  • 急坂や崩れやすい場所がある:登山道には崩壊のおそれがある箇所があり、最新情報の確認が呼びかけられている[1]

それでも私がこの山を好きなのは、まず山頂の草原と大鳥居です。だだっ広い草原に、白い鳥居がぽつんと立つ。ほかの山では見たことのない景色です。

そして、低山なのに360°の眺望が開けること。御在所岳や鎌ヶ岳はもちろん、空気が澄んだ日には名古屋の街や伊勢湾、遠くの御嶽山まで見渡せます。

なにより、短い時間でもちゃんと満足できる山です。半日しか使えない日でも、草原の山頂でひと休みして、景色を眺めて帰ってこられます。

この記事は、その入道ヶ岳を、午後から北尾根で登り、二本松尾根で下った2020年秋の記録です。

コースとプラン|椿大神社起点・北尾根で登り二本松尾根で下る周回

項目データ
山・標高入道ヶ岳 906m(三重県鈴鹿市)[1]。奥宮の建つ最高点は915m[3]
起点椿大神社。登山者は神社から最も離れた第3駐車場を使い、北尾根の登山口まで徒歩10分ほど[2]
ルート椿大神社 → 愛宕社 → 北尾根 → 北の頭 → 入道ヶ岳山頂 → 二本松尾根 → 滝ヶ谷分岐 → 椿大神社(周回)
標準コースタイム往復で約3時間40分(計画時に確認した値。下りの二本松尾根は約1時間30分)
今回の行程2020年11月1日・日帰り・1人。登り1時間10分、山頂30分、下り30分(休憩込み2時間10分。小走りで歩いた記録で、目安にはならない)
注意したい区間北尾根の序盤の急な石段と急登。登山道には崩壊のおそれがある箇所がある[1]
ほかのルート二本松尾根・井戸谷・小岐須渓谷・宮妻峡からのルートもある[1]

この日・この形にした理由

この日は休日でしたが、午前中に仕事が入っていました。動けるのは午後からです。お昼からさくっと登れる近場の低山を探しました。

選んだのは、鈴鹿セブンマウンテンで最後の1座として残っていた入道ヶ岳です。標高は7座で最も低く、コースタイムも短めなので、午後からでも往復できると考えました。

ところが、仕事を終えてお昼を食べてから向かうと、思ったより遠く、道も混んでいました。登山口に着いたのは13時30分過ぎです。

往復のコースタイムは約3時間40分です。11月はじめは、16時30分ごろから暗くなり始めます。コースタイムどおりに歩くと、下山は17時25分ごろです。暗くなり始めてから1時間近く、樹林帯を下ることになります。

そこで、ヘッドランプを持ったうえで、小走りで時間を巻いていくと決めました。登りは、展望がよいとされる北尾根を選びました[1]。下りは、標準タイムの短い二本松尾根です。

実際に歩いた行程

時刻地点
13:45北尾根コース登山口(椿大神社)
14:55入道ヶ岳 山頂
15:25下山開始
15:40滝ヶ谷分岐
15:55二本松尾根コース登山口(椿大神社)

どんな人に向いているか

標高は1,000mに届きませんが、北尾根の序盤は段差の大きい急登が続きます。ふだん低山を歩いていて、標準コースタイムの往復約3時間40分に休憩を足した行動を、下りまで含めて続けられる人なら、楽しめる山です。

  • 北尾根で登り、二本松尾根で下る周回が、展望も変化もあっておすすめ
  • 時間に余裕を持つなら、午前中に歩き始めて、山頂でゆっくり過ごす計画がいちばん楽しめる
  • 標準コースタイムで歩くなら、この日の私のような13時台の出発は勧めない。午後から登るなら、引き返す時刻を先に決め、ヘッドランプを必ず持つ(後半の「PTの実用メモ」で詳しく書きます)

北尾根の登山口〜北の頭:長い石段と、断続的な急登

北尾根コースは、椿大神社の近くにある愛宕社(あたごしゃ)の鳥居から始まります。

入道ヶ岳 北尾根コースの登山口 椿大神社の愛宕社の鳥居と道標 鈴鹿

歩き始めてすぐ、長い長い急な石段が待っていました。

入道ヶ岳 北尾根コース序盤の急な石段 鎖の手すりが付いた愛宕社への参道

登山ではなく、お参りが目的の人がここを登りきるのは、なかなか大変そうです。

石段を登りきると、愛宕社に着きます。ここから、ようやく登山道らしい道になります。

入道ヶ岳 北尾根コースの石段を登りきった先にある愛宕社

この山域には、送電線の鉄塔が多く立っています。北尾根も、鉄塔の真下をくぐって進みます。

入道ヶ岳 北尾根コースで真下をくぐる送電線の鉄塔 見上げた写真(別日に撮影)

鉄塔の写真は、2020年11月23日に同じ場所で撮ったものです。

ここからは、断続的な急登が続きます。時間がないので小走りで進みましたが、段差が大きく、足を高く上げる一歩の連続です。すぐに息が上がりました。

途中には、トタン張りの避難小屋があります。

入道ヶ岳 北尾根コースの途中にあるトタン張りの避難小屋 山頂まで1.3km

避難小屋の看板には「山頂マデ1.3km」とありました。ここを過ぎると、登りは比較的ゆるやかになります。

終わりかけの紅葉を眺めながら、息が上がりすぎない程度の小走りで進みました。

入道ヶ岳 北尾根コースの終わりかけの紅葉と眼下の平野 11月はじめ

北の頭〜山頂:低木の稜線と、つかの間の晴れ間

北の頭まで登りつめると、景色が一気に開けます。

入道ヶ岳 北の頭から山頂へ続く低木と草原の稜線 鈴鹿の山並み

御在所岳や鎌ヶ岳が見え、まわりは低木ばかりの、気持ちのいい稜線です。

お昼過ぎから曇り空でしたが、運よく少しだけ晴れ間がのぞきました。

入道ヶ岳 北の頭付近の草原の尾根と青空 眼下に広がる伊勢平野

入道ヶ岳の山頂:大鳥居の草原と、360°の眺望

14時55分、山頂に着きました。コースタイムの半分くらいで登ってこられたので、時間には少し余裕ができました。

山頂にあるのは、大鳥居だけです。当時は、山名や標高を示す目印が見当たりませんでした。

入道ヶ岳の山頂に立つ椿大神社の白い大鳥居と青空 鈴鹿セブンマウンテン

そのかわり、だだっ広い草原が広がっています。15時ともなると、山頂にはもう誰もいません。貸し切りの草原で、駆け上がってきた疲れを癒やすために、少しだけ昼寝をしました。

入道ヶ岳の山頂の草原で寝転んで見た景色 眼下の平野と秋の空

山頂から見える山と街

山頂からの眺望は抜群です。北には、御在所岳のロープウェイの山上駅や、鎌ヶ岳がくっきり見えました。

入道ヶ岳の山頂から北に見た鎌ヶ岳と御在所岳 鈴鹿セブンマウンテン

ここからの3枚は、さらに空気が澄んでいた別の日(2020年11月23日)に撮ったものです。名古屋の街も、よく見えます。

入道ヶ岳の山頂から見た名古屋の街並みとビル群(別日に撮影)

伊勢湾も、手に取るように見えます。

入道ヶ岳の山頂から見た伊勢湾と臨海部の工場群(別日に撮影)

遠くには、御嶽山まで見通せました。

入道ヶ岳の山頂から遠くに見えた御嶽山(別日に撮影)

御神体の山の、大鳥居と奥宮

入道ヶ岳は、山麓の椿大神社の御神体です[2]。だから山頂には大鳥居があり、そこから少し離れた場所には奥宮があります。

この日は時間の都合で、奥宮には寄りませんでした。下の写真は、別の機会(2021年10月)に撮ったものです。

入道ヶ岳の椿大神社奥宮の鳥居と社(2021年10月に撮影)

山頂で過ごすうちに、大鳥居に西日が差しかかりました。ススキの穂が光り、秋の気配とあわせて、美しい一枚が撮れました。

入道ヶ岳の山頂の大鳥居に差し込む西日とススキの原 11月の夕方

別の日(2020年11月23日)に撮った写真も美しく、没にしきれませんでした。2枚、ここに載せておきます。

入道ヶ岳の大鳥居とススキのシルエット 雲間の太陽(別日に撮影)

入道ヶ岳の大鳥居のシルエットと夕日 ススキ越しの青空と白い雲(別日に撮影)

山頂〜椿大神社:二本松尾根を駆け下りる

昼寝と撮影を楽しんだら、日が落ちる前に下山できるよう、15時25分に行動を再開しました。

入道ヶ岳の山頂から下山を始める前に見た伊勢平野とススキ

まずは、二本松尾根の方面へ進みます。

入道ヶ岳 山頂付近の二本松尾根コースの道標 椿大神社方面

振り返ると、木々の上に大鳥居が見えました。

入道ヶ岳 二本松尾根の下りから振り返って見た山頂の大鳥居

入道ヶ岳の大鳥居は、草原に立っているため、御在所岳など周りの山からもよく見えます。

二本松尾根にも避難小屋があり、そのわきを通りました。

入道ヶ岳 二本松尾根コースの避難小屋の入り口

滝ヶ谷分岐を経て、椿大神社へ下ります。

入道ヶ岳 二本松尾根の滝ヶ谷分岐の道標と通報ポイント5

駆け下りた結果、コースタイム1時間30分のところを、30分で下りてきてしまいました。自分でも驚きの速さです。

入道ヶ岳 二本松尾根コースの登山口の道標と通報ポイント1 椿大神社

15時55分、二本松尾根の登山口に到着です。仕事終わりのコンパクトな登山でしたが、鈴鹿セブンマウンテンの最後の1座を、草原と眺望とともに満喫できました。

入道ヶ岳を午後から歩くなら(PTの実用メモ)

引き返す時刻を決め、ヘッドランプを持つ

ここからは、当日の行動の記録ではなく、振り返って勧めたいことです。

午後から登るときは、山頂に着いていなくても引き返す時刻を、歩き出す前に決めておきます。日が暮れ始める時刻から、下りのコースタイムと休憩を引いて決めると、迷わずに済みます。

それでも、思いどおりに進まないのが山です。道迷いや足のひねりで、30分遅れるだけで、下りは暗い樹林帯になります。

この日はヘッドランプを持っていました。結果として使わずに済みましたが、「使わない予定でも持つ」のが午後スタートの前提です。選び方は登山用ヘッドランプの選び方にまとめています。

速い下りでも、この日は脚に何も出なかった

コースタイムの3分の1の時間で駆け下りましたが、当日も翌日以降も、筋肉痛や膝の痛みは出ませんでした。

ただ、これは「下りを走っても大丈夫」という意味ではありません。下りでは、太ももの前の筋肉が、ブレーキをかけながら伸ばされる使われ方をします。慣れない脚で同じことをすれば、筋肉痛や膝の痛みが出やすくなります。

まとめ:入道ヶ岳は、短い時間でも草原と眺望を味わえる山

4コマでおさらいします。

入道ヶ岳(鈴鹿)の午後からの日帰り登山を4コマで紹介 午前は仕事でセブンマウンテン最後の1座へ、北尾根の急な石段と急登、引き返す時刻とヘッドランプで午後スタートに備え、草原の山頂に立つ大鳥居 ヤマカルテ

  • 入道ヶ岳(906m)は、鈴鹿セブンマウンテンの最南端で、7座のうち唯一1,000mに届かない山
  • 山そのものが椿大神社の御神体で、山頂の草原に白い大鳥居が立つ
  • 山頂は360°の眺望。御在所岳・鎌ヶ岳、澄んだ日は名古屋の街や伊勢湾、御嶽山まで見える
  • 今回は13時45分に歩き始め、北尾根で登り二本松尾根で下る周回を休憩込み2時間10分で歩いた(小走りでの記録。標準は往復約3時間40分)
  • 北尾根の序盤は、長い石段と段差の大きい急登が続く
  • 午後から登るなら、引き返す時刻を先に決め、ヘッドランプを必ず持つ
  • 速い下りでも、この日は脚に何も出なかった。ただし、時間に追われたときほど歩幅を小さく、速度を抑える

半日あれば、山頂の草原でひと息つける山があります。次に半日空いたら、時間に余裕を持って入道ヶ岳を歩いてみてください。

鈴鹿のほかの山の記録は、竜ヶ岳(鈴鹿)の日帰り周回や釈迦ヶ岳(鈴鹿)の庵座谷周回、御在所岳のヴィア・フェラータに書いています。

参考文献

  1. 三重県観光連盟. 入道ヶ岳(観光三重)(2026年11月5日閲覧). https://www.kankomie.or.jp/spot/22039
  2. 三重県観光連盟. 山頂からの絶景!伊勢湾や鈴鹿の山並みを一望「入道ヶ岳」(観光三重, 2023年8月8日). https://www.kankomie.or.jp/report/1278
  3. ニッポン旅マガジン. 入道ヶ岳(2026年11月5日閲覧). https://tabi-mag.jp/me0324/