子どもの虫よけは何歳から? 登山口の木陰で親が手に取った虫よけを子どもの腕に塗る水彩イラスト ディートとイカリジンの違いと登山のマダニ対策 ヤマカルテ

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「子どもに虫よけスプレーを使っていいのは、何歳から?」 「山でマダニに咬まれたら怖いけれど、何をすればいいのか分からない」

子連れで山や公園に行く前に、そんな不安を感じていませんか。

答えは虫よけの成分で決まります。ディートは年齢によって1日に使える回数が決まっていて、生後6か月未満には使いません。イカリジンには年齢や回数の決まりがありません。そして山のマダニ対策は、スプレーより先に「服装」と「下山後のチェック」が土台になります。

私は理学療法士(PT)として10年以上臨床に立ち、登山では140座以上を歩いてきました。3歳の子を公園へ連れていく時や、キャリアで背負う登山では、イカリジンの虫よけを毎回使っています。この記事では、国の資料・メーカーの使用上の注意・研究データをもとに、年齢別の使い方からマダニ対策までを理由つきでまとめました。

読み終えるころには、お子さんの年齢に合う虫よけと、次の山で何をすればいいかが決まっているはずです。

先に、わが家で子どもに使っている虫よけを紹介します。選んだ理由は、このあと成分の違いから説明します。

子どもの虫よけは何歳から?ディートとイカリジンの違い

子どもの虫よけは、ディートかイカリジンかという成分の違いで、何歳から・1日何回使えるかが決まります。商品名やパッケージの「赤ちゃんにも」という雰囲気ではなく、裏面の「有効成分」を見て選んでください。

子どもの虫よけは何歳から? ディート12%以下は6か月未満に使わない・6か月〜2歳未満は1日1回・2歳〜12歳未満は1日1〜3回、ディート30%は12歳以上、イカリジンは年齢制限なしの早見表 ヤマカルテ

成分生後6か月未満6か月〜2歳未満2歳〜12歳未満12歳以上
ディート12%以下使わない1日1回1日1〜3回制限なし
ディート30%使わない使わない使わない使える
イカリジン年齢制限なし(6か月未満は注意)制限なし制限なし制限なし

ディートの回数は2005年の国の通知で決まり[17]、今もメーカーの使用上の注意に書かれています[1]。イカリジンはメーカーの製品情報[2][3]によります。

ディートは年齢で1日の回数が決まっている

ディートは、生後6か月未満には使わず、2歳未満は1日1回、12歳未満は1日1〜3回までという回数の目安があります[17][1]。12歳未満の子には顔に使わないことも決まっています。濃度30%の製品は12歳からです。

つまり、1歳の子に朝1回スプレーしたら、午後に汗で流れても、その日はもう塗り直せません。1日行動する登山では、この回数の制限が現実的な壁になります。

イカリジンは年齢・回数の決まりがない

イカリジンには、年齢制限や使用回数の決まりがありません[2]。汗で落ちたら塗り直せるので、子連れで一日歩く登山と相性のよい成分です。

ただし、メーカーは「生後6か月未満の乳児は皮膚の角層ができあがっていないため注意が必要」とも書いています[3]。制限がないことと、何も気にしなくていいことは違います。

ほかにも、ほぼ無臭で服にニオイがつきにくい、プラスチックや化繊を傷めにくい、という違いがあります[2]。ディートはプラスチックやレーヨン、革に影響することがあるので、ザックや時計、サングラスにかからないよう注意が要ります。

登山の虫よけは「効く虫」と「効く時間」で選ぶ

登山で使う虫よけは、対象の虫にマダニ・ブユ(ブヨ)・アブが入っているかと、何時間もつかの2点で選びます。公園の蚊と違い、山ではこうした虫が相手になるからです。

登山の虫よけは2つの基準で選ぶ 対象の虫にマダニ・ブユ・アブが入っているかと何時間もつか 天然成分は効く時間が短くディートとイカリジンは同じ量なら大差ない ヤマカルテ

対象の虫はパッケージに書いてある

虫よけが効く虫は、製品ごとに承認された範囲がパッケージに書いてあります。たとえば私が子どもに使っているイカリジン15%の製品は、蚊・ブユ・アブ・マダニ・ヌカカ・ヤマビルなどが対象です[3]。

マダニの記載がない製品は、山のマダニ対策には使えません。「虫よけ」とひとまとめにせず、対象の虫の欄まで確認してください。

天然成分の虫よけは効く時間が短い(蚊の実験)

アロマなどの天然成分の虫よけは、蚊に対して効く時間が短いことが実験で示されています。15人のボランティアで蚊に対する効果を比べたアメリカの研究では、ディート23.8%の製品が平均約5時間(301.5分)守ったのに対し、ほとんどの植物由来の製品は20分未満でした[7]。腕に巻くバンド型の虫よけは、効果がありませんでした。

天然成分の製品が悪いわけではありません。ただ、数時間歩く登山で頼るには、効く時間が足りないということです。

ディートとイカリジンは、同じ量なら効く時間に大差ない

蚊を使った研究をまとめたレビューでは、ディートとイカリジンは同じ量を塗れば、効く時間に大きな差はないとされています[8]。ただし、元になった研究には質の低いものも多いと、著者自身が書いています。

マダニについては、欧米のマダニの幼い段階(若ダニ)を腕で試した実験があります。イカリジン10%は5〜8時間、ディート20%は4〜4.5時間、マダニが腕を登るのを防ぎました[9]。日本のマダニや、大人のマダニで同じ結果になるかは確かめられていません。

どちらも「成分が強いかどうか」より、濃度と、塗る量・塗りムラで効く時間が変わります。

大人はディート、子どもはイカリジン15%

私は、大人はディート、子どもはイカリジン15%で使い分けています。大人は回数の制限を気にしなくてよいからです。子どもは、一日歩いても汗で落ちたら塗り直せることを優先しました。

子どもに使っているのは、フマキラーの天使のスキンベープミスト プレミアムです。イカリジン15%で、最大8時間とされています[3]。公園でも、キャリアで背負う登山でも、毎回これを使っています。

子どもへの塗り方|顔には直接スプレーしない

子どもの顔や首には、虫よけを大人の手に一度取ってから塗ります。スプレーを顔に向けると、目や口に入りやすいからです。

子どもへの虫よけの塗り方 顔は大人の手に取ってから目・口の周りを避ける 手のひらには塗らない 塗りムラをなくす 汗で落ちたら塗り直す(ディートは回数の上限内) ヤマカルテ

  • 顔:大人の手にスプレーし、目・口の周りを避けて塗る[3]。ディートは12歳未満の顔には使わない[1]
  • 手:子どもは手を口に入れるので、手のひらには塗らない。日本の目安の参考になったカナダの規制でも、ディートは子どもの顔と手に使わないとされています[4]
  • 塗りムラをなくす:肌の出ているところ全体に、薄くまんべんなく
  • 汗で落ちたら塗り直す:ディートは回数の上限の範囲内で

キャリアで背負われている子は、自分では虫を払えません。背中にいて親から見えにくいぶん、出発前にしっかり塗っておくことが大切です。

子連れ登山でマダニが怖い理由はSFTS

山のマダニが怖いのは、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という、命に関わる感染症を運ぶことがあるからです。厚生労働省は、日本で報告されたSFTS患者の致死率を27%としています[10]。マダニに咬まれた人の27%が亡くなるという意味ではありません。

マダニが運ぶSFTSの届出数 2025年に発病した人は192人で過去最多 2013年からの累計1,368人 報告された患者の致死率27% 感染地域は北海道・茨城・栃木・神奈川へ東に拡大 ヤマカルテ

患者は増え、地域は東へ広がっている

SFTSの届出は、2025年に発病した人が192人で、これまでで最も多い年になりました[11]。2013年からの累計は1,368人です(2026年7月末時点)。

以前は西日本の病気でしたが、今は北海道・茨城・栃木・神奈川などでも感染した人が報告されています[11]。全国の届出を分析した研究でも、2013年から2023年にかけて届出の率が約3倍になり、感染地域が広がったとされています[12]。私が地元にしている東海地方では、三重県46人、愛知県18人、岐阜県3人が県内で感染したと推定されています[11]。

子どもの患者は少ない。それでも対策をする理由

SFTSの患者の多くは高齢者で、届出時の年齢の中央値は76歳、20代以下は16人です[11]。子どもの届出はわずかです。

それでも子連れ登山でマダニ対策をするのは、咬まれた時点では、どのマダニが病気を持っているか分からないからです。マダニは日本紅斑熱など、ほかの感染症も運びます。また、一緒に山に入る親自身も咬まれる側です。

マダニに咬まれる人は4月〜9月に多く、とくに5〜7月がピークとされています[13]。春から秋の子連れ登山では、毎回の備えにしてください。

マダニ対策は、虫よけより先に服装

マダニ対策の土台は、肌を出さない服装です。厚生労働省も、ディートやイカリジンの虫よけは「補助的な効果」と位置づけています[10]。

マダニ対策の子どもの服装 帽子・首にタオル・長袖長ズボン・明るい色の服・シャツの裾はズボンの中へ・ズボンの裾は靴下の中へ キャリアの子は足首が出やすい ヤマカルテ

厚生労働省が勧める服装は次のとおりです[10]。

  • 長袖・長ズボン
  • シャツの裾はズボンの中へ、ズボンの裾は靴下や長靴の中へ
  • 足を完全に覆う靴、帽子、手袋
  • 首にタオルを巻く
  • 明るい色の服(ついたマダニを見つけやすい)

子どもは草むらや道ばたの葉に手を伸ばします。子連れでは、登山道の真ん中を歩き、休憩では草の上に直接座らないことも、服装と同じくらい大切です。

正直に書くと、服装・虫よけ・チェックのどれか1つが、マダニの病気を「何割減らす」と示した研究はありません[14]。どれも完全ではないからこそ、服装・虫よけ・下山後のチェックを重ねるのが現実的な対策です。

下山後は、お風呂でマダニチェック

家に帰ったら、お風呂で全身を見て、マダニがついていないか確かめます。マダニは咬みついてから長い時間血を吸い続けるので、早く見つけるほど安心です。

下山後のお風呂でのマダニチェック 首・耳・わきの下・足の付け根・手首・膝の裏の6か所 咬まれていたら自分で引き抜かず皮膚科へ 6日〜2週間は体調を見る ヤマカルテ

厚生労働省が挙げている確認のポイントは、首・耳・わきの下・足の付け根・手首・膝の裏です[10]。子どもは自分で見られないので、親が一緒に確かめます。

マダニに咬まれたら、自分で引き抜かない

マダニが皮膚に食いついていたら、無理に引き抜かず、皮膚科などの医療機関で取ってもらいます[10]。引き抜くと、マダニの口の部分が皮膚に残ることがあるからです。山の中ですぐ受診できない場合の考え方は、登山の救急セットにまとめています。

日焼け止めと虫よけは、日焼け止めが先

日焼け止めと虫よけを両方使うときは、日焼け止めを先に塗り、あとから虫よけを重ねます。

日焼け止めと虫よけの塗る順番 日焼け止めが先で15分ほどあけて虫よけ 逆の順番ではディートの吸収が増えた研究がある ヤマカルテ

ディートと日焼け止めの成分(オキシベンゾン)の塗る順番を比べた研究では、ディートの上から日焼け止めを塗ると、ディートが体に吸収される量が増えました[15]。逆に日焼け止めを先に塗った場合は、吸収は増えませんでした。研究者は、日焼け止めを先に塗り、15分ほどあけて虫よけを塗る順番を勧めています。

日焼け止めを重ねても、虫よけの効果は落ちなかったという臨床試験もあります[16]。ただし、どちらもディートでの結果で、イカリジンで同じ順番を確かめた研究は見つけられませんでした。迷ったら日焼け止めが先と覚えておけば十分です。子どもの紫外線対策そのものは、子連れ登山の持ち物・安全管理で解説しています。

まとめ:子どもの虫よけは成分で選び、マダニは服装とチェックで防ぐ

  • 何歳から使えるかは成分で決まる。ディートは生後6か月未満に使わず、2歳未満は1日1回、12歳未満は1日1〜3回。30%は12歳から
  • イカリジンは年齢・回数の決まりがない。一日歩く子連れ登山で塗り直せる
  • 対象の虫にマダニ・ブユが入っているかをパッケージで確かめる。天然成分は効く時間が短い
  • 顔には大人の手に取ってから。手のひらには塗らない
  • マダニが怖いのはSFTS。2025年は届出が過去最多で、感染地域は東へ広がっている
  • 対策の土台は服装。裾は靴下へ、明るい色の服。キャリアの子は足首に注意
  • 下山後はお風呂でチェック。咬まれていたら引き抜かず受診
  • 日焼け止めが先、虫よけが後

虫よけ選びは、裏面の「有効成分」を見るだけで迷わなくなります。次の山の前に、お子さんの年齢に合う1本と、裾を入れられる長めの靴下を用意しておきましょう。それだけで、子連れの山はぐっと安心になります。

子どもの服装の組み方は子どもの登山の服装、子連れ登山の全体の注意点は子連れ登山の注意点・安全対策にまとめています。出発前の持ち物の確認には、季節と山を選ぶと必要な物が出る装備チェックリストも使えます。

参考文献

  1. アース製薬. ディートとは|虫よけ剤サラテクト(年齢別の使用回数・使用上の注意). https://www.earth.jp/saratect/safety/deet/(2026年9月29日確認)
  2. フマキラー. 注目の虫よけ成分「イカリジン」について解説|For your LIFE. https://fumakilla.jp/foryourlife/1019/(2026年9月29日確認)
  3. フマキラー. 天使のスキンベープミスト プレミアム[イカリジン配合]200mL|製品情報. https://fumakilla.jp/insecticide/836/(2026年9月29日確認)
  4. 厚生労働省, 2005. ディート(忌避剤)に関する検討会 資料(国民生活センター「虫よけ剤」テスト結果ほか). 2005年8月15日開催.
  5. 厚生労働省医薬食品局安全対策課長, 2010. ディートを含有する医薬品及び医薬部外品の安全性に関する定期報告について(薬食安発1026第3号). 医薬品医療機器総合機構.
  6. Ghali & Albers, 2024. An updated review on the safety of N, N-diethyl-meta-toluamide insect repellent use in children and the efficacy of natural alternatives. Pediatric Dermatology.
  7. Fradin & Day, 2002. Comparative efficacy of insect repellents against mosquito bites. New England Journal of Medicine.
  8. Goodyer & Schofield, 2018. Mosquito repellents for the traveller: does picaridin provide longer protection than DEET? Journal of Travel Medicine.
  9. Büchel et al., 2015. Repellent efficacy of DEET, Icaridin, and EBAAP against Ixodes ricinus and Ixodes scapularis nymphs (Acari, Ixodidae). Ticks and Tick-borne Diseases.
  10. 厚生労働省, 2025. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(第8版). https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
  11. 国立健康危機管理研究機構, 2026. 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2026年7月31日現在). 感染症情報提供サイト.
  12. Ohno et al., 2025. Comprehensive epidemiological analysis of severe fever with thrombocytopenia syndrome in Japan, 2013-2023: descriptive observational study. Lancet Regional Health – Western Pacific.
  13. Natsuaki, 2021. Tick bites in Japan. Journal of Dermatology.
  14. Wormser, 2005. Prevention of Lyme borreliosis. Wiener Klinische Wochenschrift.
  15. Yiin et al., 2015. Assessment of dermal absorption of DEET-containing insect repellent and oxybenzone-containing sunscreen using human urinary metabolites. Environmental Science and Pollution Research.
  16. Murphy et al., 2000. The effect of sunscreen on the efficacy of insect repellent: a clinical trial. Journal of the American Academy of Dermatology.
  17. 厚生労働省医薬食品局安全対策課長, 2005. ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について(薬食安発第0824003号). https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/08/tp0824-1.html