水彩で描いた夏の低山の登山道。木陰で足を止め、大人が中腰になって帽子をかぶった子どもに水筒を手渡している。子どもの水分は体重で決める、熱中症を防ぐ目安を理学療法士が解説 ヤマカルテ

夏の登山に子どもを連れて行くとき、いちばん気になるのが熱中症ではないでしょうか。

「子どもは大人より暑さに弱い」とよく言われます。だから慎重に、と。

ところが、この一律な見方は専門家団体自身が見直しています。米国小児科学会は2011年に、運動する子どもと青少年について、それまでの見解を否定する声明を出しました。条件つきではありますが、体が一方的に劣っているわけではなかったのです。

私は理学療法士(PT)として10年以上、体の使い方と体温調節を扱ってきました。子どもと山にも通っています。そのうえで研究を調べ直すと、注目すべき点がもうひとつ見えてきました。年齢や体調と並んで、行程・休憩・服装・水分という調整できる条件が、結果を大きく左右するということです。そしてその条件は、たいてい親が決めています。

この記事では、体重から水分量を出す具体的な目安と、飲ませ方の工夫を順に整理します。読み終えるころには、次の山行で持たせる飲み物と、休憩の入れ方が決まっているはずです。

「子どもは暑さに弱い」は、運動する年代では見直されている

まず前提をひっくり返します。米国小児科学会(AAP)は、11年のあいだに正反対の声明を出しました。

2000年の声明はこうでした。形態的・生理的な理由により、運動する子どもは高い暑熱ストレスにさらされたとき、大人ほど効果的に適応できない[1]。当時の総説も、体表面積と体重の比が大きいこと、発汗率が低いこと、暑熱順化が遅いことを理由に挙げています[2]

ところが2011年の声明は、これを名指しで否定します。新しい研究の結果は、従来の考えに反して、若年者は、適切な水分補給が保たれているかぎり、暑熱下の運動において大人より体温調節能力が劣るわけではないことを示している[3]

同じ団体が、同じテーマで、逆のことを言ったわけです。

発汗量は少ない。それでも不利ではない

理屈を整理したのが Falk と Dotan の総説です[4]。子どもには確かに違いがあります。体表面積と体重の比が大きい。歩く効率が悪く、体重あたりでより多くの熱を産生する。そしてあらゆる条件で、子どもの発汗率は大人より低い

ここまでは通説どおりです。しかし著者らは続けます。熱波のあいだでも、子どもの熱中症発生率が高いことを示す疫学データは存在しない[4]

彼らの解釈は、子どもは劣っているのではなく違うやり方をしているというものでした。汗の蒸発ではなく、相対的に大きな皮膚の表面から熱を逃がす。しかもそのぶん水分を節約できるという利点まである[4]

実測でも差が出なかった

2025年、これまでで最大規模の小児データで検証されました[5]。10〜16歳の子ども68人と成人24人が、30℃と40℃の環境で45分間の歩行・走行を行っています。

結果、深部体温の上昇に年齢の影響はなく、脱水の進み方にも年齢の影響はありませんでした[5]

米国小児科学会の見解が2000年と2011年で逆になったことを示す図解 2000年は大人ほど効果的に適応できない、2011年は従来の考えに反して劣るわけではない、2025年の実測でも10〜16歳と大人で深部体温の上昇と脱水の進み方に差はなかった ヤマカルテ

危険を決めるのは、調整できる4つの条件

では、何が子どもを危険にするのか。2011年の声明は、水分状態の悪さに加えて3つを挙げています[3]

子どもの熱中症リスクを決める調整できる4つの条件の図解 水分状態・過度な運動・回復不足・熱がこもる装備の4つとも親が当日その場で変えられる ヤマカルテ

  • 過度な運動
  • 繰り返す運動のあいだの回復不足
  • 熱がこもる不適切な服装・装備

そして、これらはいずれも修正できる要因なので、労作性熱中症はたいてい予防できると結論しました[3]

ここが登山と噛み合います。並べてみてください。行程の長さを決めるのは親です。休憩の頻度も親。着せるものも、持たせる水の量も親。4つの要因は、いずれも親が調整できる範囲にあります

もちろん、これがすべてではありません。年齢、その日の体調、暑さへの慣れ、持病。子ども側の要因も結果を左右します。ただ、そちらは当日すぐに変えられません。すぐ変えられるほうから手をつける、という順番の話です。

水分量は体重で決める:1時間に体重×13mL

具体的な数字を出します。小児スポーツ医学の総説では、保守的に計算した目安として次の値が示されています[6]

  • 行動中:1時間あたり、体重1kgにつき13mL
  • 行動後:行動1時間につき、体重1kgあたり約4mL

体重別に計算すると、こうなります。

子どもの体重行動中1時間あたり行動4時間の合計行動後に追加
15kg約195mL約780mL約240mL
20kg約260mL約1,040mL約320mL
25kg約325mL約1,300mL約400mL
30kg約390mL約1,560mL約480mL

行動後の補給を軽く見ないでください。狙いは、次の行動を脱水したまま始めないことです[6]。下山後や翌日の行程がある場合はとくに意識したいところです。

大人の式より多く出ることに戸惑わないでください

ヤマカルテの登山の水分量 計算機は、大人向けに体重×行動時間×5mLで脱水量を出し、その7〜8割を補給量としています。この式だと体重60kgの大人で1時間あたり210〜240mL。体重20kgの子どもの260mLのほうが多くなります

これは計算違いではありません。もとの総説が保守的に、つまり不足しない側に寄せて計算した数字だからです。これだけ飲ませなければ危険、という意味ではありません。

そう考えると、実務上の結論はシンプルになります。量を厳密に管理することより、飲める状態をつくることのほうが大事だということです。

のどの渇きに任せてよいのは、飲む機会があるときだけ

先ほどの総説には、もう1つ重要な指摘があります。体格に対する自発的な飲水量は、子どものほうが大人と同等かむしろ多い[6]。つまり、飲む機会さえ十分にあれば、のどの渇きに任せた飲水で意味のある脱水は防げるというのです。

ただし、これは条件つきの結論です。同じ総説は最後にこう書いています。子どもは適切に水分を摂る動機づけを欠くことがあるため、その責任は指導者と親にある[6]

自分の必要量を読み違える例も報告されています。渇きに任せて飲ませた条件で、ある持病を持つ子どもたちは対照群の半分以下しか飲まず、失った水分は2倍でした[7]。強制的に飲ませた条件では差が消えています。「飲みたがらない」は、足りている証拠にならないわけです。

山ではどうでしょうか。休憩をどこで取るか、何分止まるか、水があと何mL残っているか。どれも子どもは決められません。渇きに任せてよいという前提が、登山では最初から崩れています。

渇きに任せてよいのは飲む機会があるときだけと示す図解 ふだんの生活は飲みたいときに自分で飲めるが、登山中は休憩場所も時間も水の残量も子どもは決められない。だから親が20〜30分ごとに立ち止まって機会をつくる ヤマカルテ

甘くしなくていい。味があるだけで飲む量は増える

水が基本の飲み物であることは変わりません。そのうえで、飲む量そのものを増やす方法があります。味をつけることです。

これは1990年代から2025年まで、繰り返し確認されています。

研究味のない水と比べた飲水量
Bar-Or ら(1996)ブドウ味の水で44.5%増[8]
同上ブドウ味の糖質・電解質溶液で91%増[8]
Rivera-Brown ら(1999)味つき飲料で水分平衡を維持。水だけでは体重の0.94%を失う軽度の脱水[9]
Rezaei ら(2025)低糖の味つき飲料で128%増[10]

いちばん新しい2025年の研究は、8〜10歳の子ども21人が約30℃の環境で3時間歩いたものです。総飲水量は味つき飲料で946mL、水で531mL。21人中19人が、味つきのときに多く飲みました[10]

Bar-Or らの一連の研究では、味のない水を自由に飲ませた子どもは進行性に脱水し、深部体温は大人より速く上昇しました[8]。逆に言えば、味つきの糖質・電解質溶液を与えたときは、3時間の運動でも脱水を防げています[8]

ただし、いずれも人数の少ない、環境を管理した研究です。荷物を背負い、日射を受け、登り下りのある登山で同じ増え方をするとはかぎりません。方向は信じてよいが、数字は再現を期待しない、という距離感で読んでください。

「ジュースはなるべく避けたい」と、ちゃんと両立します

ここまで読んで、身構えた方もいると思います。私もそうです。普段は甘い飲み物をできるだけ避けさせているのに、山の日だけ解禁するのか。一度おいしいものを覚えたら、翌週から家でも要求されるのではないか。

その心配は要りません。飲む量を増やしているのは糖分ではなく、味そのものだからです。

もう一度、先ほどの表を見てください。糖質を加えていないブドウ味の水でも、飲水量は44.5%増えています[8]。糖質・電解質を入れるとさらに増えますが、味をつけただけで効果の大きな部分が出ているわけです。2025年の研究で使われたのも低糖の飲料でした[10]

つまり「山の日は特別」という例外を作らなくてかまいません。麦茶、無糖のフレーバーウォーター、薄めた経口補水液。普段の家庭の方針の範囲で選べます。濃さより、味があることのほうが要点です。

総説も、摂取量そのものが中身より重要な問題なので、飲むものは本人の味の好みで選んでよいとしています[6]。「電解質が入っているから良い」というより、好きな味だからたくさん飲むという経路で結果につながっている、と読むのが自然です。

味つきと水を、並べて持たせない

もうひとつ、実際にやると必ずぶつかる問題があります。

味つきを1本持たせると、それしか飲まなくなる。「水はいらない、こっちがいい」と言い張り、味つきが尽きたあとは水に手をつけない。結果として、1日のトータルはかえって減る。子連れで山に行ったことがあれば、一度は通った道ではないでしょうか。

対策は、2種類を並べないことです。持たせる水分の大半を、薄い味つきで統一する。選択肢が1つなら、比べようがありません。特別な1本にするほど希少性が上がって、取り合いになります。

じつはこのやり方は、研究の設定にも近いものです。引用した研究はどれも、1回の試行につき1種類の飲み物しか与えていません[8][9][10]

ただし正直に言えば、ここは研究の外側です。「味つきと水を同時に持たせたとき何が起きるか」を調べた研究は、見つけられませんでした。並べないという提案は、研究の設定と親としての実感からの推論だと受け取ってください。お子さんが水も味つきも分けへだてなく飲むタイプなら、無理に統一する必要はありません。うちの子はどうか、で決めてください

味つきと水を並べて持たせない理由の図解 2種類を並べると味つきしか飲まず尽きたら水に手をつけないため1日の合計は減る、薄い味つきで統一すると選択肢が1つで比べようがなく飲む量が保てる ヤマカルテ

キャリアに乗っている子は、別に考える

ここは正直に書きます。チャイルドキャリアに乗った子どもの熱負担を直接調べた研究は、見つけられませんでした。以下は研究の裏づけがない、私の推論です。

チャイルドキャリアに乗った子は別に考える理由の図解 気になる条件は親の背中に密着して風が当たりにくい・自分で日陰へ移ったり脱いだりできない・暑いや喉が渇いたと言葉で伝えられない、やることは日除けを使う・こまめに下ろして風を当てる・顔色と機嫌を見る ヤマカルテ

そのうえで、キャリアの子には気になる条件がそろっていると考えています。

  • 親の背中に密着していて、風が当たりにくい
  • 自分の判断で日陰へ移ったり、脱いだりできない
  • 暑い・喉が渇いたと言葉で伝えられない年齢のことが多い
  • そもそも、10〜16歳で差がなかったという研究の対象外

つまり、この記事でここまで書いてきた結論を、乳幼児にそのまま当てはめるべきではありません

飲ませ方も別です。乳児の水分は月齢や授乳の状況で変わるので、上の体重別の表は使わないでください。かかりつけ医に確認するのが確実です。

やることは、日陰と風を確保することに絞られます。休憩ごとに顔色と機嫌を見て、日除けを使い、こまめに下ろして風を当てる。手間はかかりますが、推論しかない領域では慎重な側に倒すのが妥当な対応だと考えています。

背負う側の負担についてはチャイルドキャリア登山で腰を守るに、何歳からどの標高まで行けるかは子どもと登山、何歳から行ける?にまとめています。

危ないサインは、大人と同じ

熱中症そのものの見分け方は、子どもでも骨格は変わりません。体の熱さも手がかりのひとつですが、山では深部体温を測れないので、いちばん頼りになるのは意識と言動です。

見分け方と現場での冷やし方は登山の熱中症に詳しく書きました。子どもの場合は、症状を言葉にできない分だけ大人が先に気づく必要がある、という一点だけが違います。

判断に迷ったら、下ります。標高を下げれば気温も下がるので、下山そのものが対策になります。

出発前にも引き返す線を決めておくと迷いません。猛暑日の予報、日陰の少ないコース、予定どおりに水が減っていない、いつもより元気がない。どれかが当てはまったら、短縮するか日を改める。この判断がいちばん確実な熱中症対策です。

子どもの熱中症でためらわず救急要請すべき5つのサインの図解 言動がおかしく呼びかけへの反応が鈍い・けいれんしている・ふらついてまっすぐ歩けない・全身に力が入らず崩れ落ちる・自分で安全に水を飲めない、ひとつでも当てはまれば119番と冷却を同時に始める ヤマカルテ

まとめ:子どもの体を疑うより、条件を整える

  • 「子どもは暑さに弱い」という一律の見方は、米国小児科学会が2011年に見直した。運動する10〜16歳では、深部体温も脱水の進み方も大人と差がなかった
  • 危険を決めるのは水分状態・過度な運動・回復不足・熱がこもる装備。年齢や体調と並んで、この4つは親が調整できる
  • 水分は行動中に体重1kgあたり毎時13mL、行動後に1時間につき4mLが出発点。必達量ではなく、乳幼児には使わない
  • 量の管理より飲む機会をつくるほうが大事。20〜30分ごとに、自分のペースで飲める時間を取る
  • 甘くしなくていい。糖質を加えていない味つきの水でも飲水量は44.5%増えた。麦茶や無糖フレーバーで足りる
  • 味つきと水を並べて持たせない。持たせる大半を薄い味つきで統一すると、選択の綱引きが起きない
  • キャリアの乳幼児は別扱い。研究の対象外なので、日陰と風を確保して慎重側に倒す

子どもの体は、思っていたより弱くありません。だからこそ、整えれば結果が変わる余地も大きいといえます。

次の山行では、まず水筒の中身を薄い味つきに変えるところから試してみてください。甘くする必要はありません。装備の準備全体は子連れ登山の持ち物と安全管理にまとめています。

参考文献

  1. American Academy of Pediatrics, Committee on Sports Medicine and Fitness, 2000. Climatic heat stress and the exercising child and adolescent. Pediatrics.
  2. Bytomski, J. R. & Squire, D. L., 2003. Heat illness in children. Current Sports Medicine Reports.
  3. Council on Sports Medicine and Fitness and Council on School Health, American Academy of Pediatrics, 2011. Policy statement—Climatic heat stress and exercising children and adolescents. Pediatrics.
  4. Falk, B. & Dotan, R., 2008. Children’s thermoregulation during exercise in the heat: a revisit. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism.
  5. Smallcombe, J. W., Topham, T. H., Brown, H. A., et al., 2025. Thermoregulation and dehydration in children and youth exercising in extreme heat compared with adults. British Journal of Sports Medicine.
  6. Rowland, T., 2011. Fluid replacement requirements for child athletes. Sports Medicine.
  7. Bar-Or, O., Blimkie, C. J., Hay, J. A., et al., 1992. Voluntary dehydration and heat intolerance in cystic fibrosis. The Lancet.
  8. Bar-Or, O. & Wilk, B., 1996. Water and electrolyte replenishment in the exercising child. International Journal of Sport Nutrition.
  9. Rivera-Brown, A. M., Gutiérrez, R., Gutiérrez, J. C., Frontera, W. R. & Bar-Or, O., 1999. Drink composition, voluntary drinking, and fluid balance in exercising, trained, heat-acclimatized boys. Journal of Applied Physiology.
  10. Rezaei, S., Guerrero, R. I., Kooima, P., et al., 2025. A Low-Sugar Flavored Beverage Improves Fluid Intake in Children During Exercise in the Heat. Nutrients.