おむつが外れたばかりの子を、山に連れて行って大丈夫か。登山口を出たら、次のトイレは山頂の小屋まで無い。途中で「おしっこ」と言われたらどうするか。和式のトイレを怖がったらどうするか。子連れ登山を考えはじめた親が、地図より先に気にするのがトイレです。

先に結論です。登山口と休憩のたびに「行っておこう」と誘う。水は減らさない。そのうえで、外れたばかりの時期は予備のおむつを持ち、補助便座と携帯トイレでトイレのない区間に備える。この3つをそろえれば、トイレのことで山を諦めずに済みます。

私は理学療法士(PT)として10年以上、体のしくみと生活の動作を見てきました。登頂140座以上で、冬の小屋が閉まった時期のテント泊では携帯トイレを使っています。家では2人の子の父親です。上の子はおむつが外れたばかり、下の子はまだおむつで、2人ともチャイルドキャリアで山に連れて行っています。

この記事では、おむつが外れる時期の目安、子どものトイレの間隔、我慢させてはいけない理由、山のトイレの難しさと道具の選び方を、研究データと実体験をもとに順に説明します。読み終えたら、次の山行のトイレ計画を1つ決めてください。

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先に、トイレまわりで持っておきたい2つを紹介します。携帯トイレは私が持ち歩いているもの、補助便座はこれから上の子のために持ち歩こうと考えているものです。選んだ理由はこのあと説明します。

おむつが外れる時期は2歳半前後が目安|外れたばかりの山は予備のおむつで備える

おむつが外れる時期は、1993年に米国の子ども1,192人を調べた研究で、トイレトレーニングを終えた年齢が平均2.4歳、幅は0.75〜5歳でした[1]。何をもって「終えた」とするかは家庭によって違いますが、外れる時期に大きな個人差があることは確かです。

おむつが外れる目安は2歳半前後 米国の調査でトイレトレーニングを終えた年齢は平均2.4歳 準備のサインは歩ける・服を脱ぎ着できる・指示が分かる・おしっこの感覚を伝えられる 外れたばかりの山は予備のおむつで備える ヤマカルテ

トイレの練習を始める準備が整うのは、多くの子で18〜30か月ごろとされています[2]。目安になるのは年齢ではなく、歩ける、服を脱ぎ着できる、指示が分かる、おしっこがたまった感覚を伝えられる、といった発達のサインです。

つまり、3歳前後の子連れ登山は「外れたばかり」の子と山へ行く時期に重なります。家では失敗しなくなっていても、山は環境が違います。トイレまでの距離が長く、寒く、知らない場所で、親も歩きながらです。

だから私は、上の子が外れたあとも、山では予備のおむつを持っていくつもりでいます。ふだんはパンツで過ごし、山でも基本はトイレ。おむつは、トイレが間に合わなかったときや、帰りの車で眠ってしまったときの保険です。

子どものトイレは1日5〜6回|登山口と休憩ごとに「行っておこう」と誘う

3〜12歳の子どもの多くは、1日に5〜6回おしっこをします[1]。起きている時間で単純に割ると2〜3時間に1回ですが、これは計算上の目安です。汗をかく山や寒い日には、間隔が大きく変わります。2歳以下の子には、この数字は当てはめられません。

子連れ登山のトイレは「行っておこう」と誘う 登山口のトイレで一度誘う・休憩のたびに声をかける・途中のトイレに寄る・「おしっこ」は安全な場所ですぐ止まる 嫌がるときは無理にさせない ヤマカルテ

子どもの膀胱はまだ小さく、年齢とともに大きくなります。国際小児禁制学会(ICCS)は、膀胱にためられる量の目安を「30×(年齢+1)mL」としています[3]。4歳なら150mL、6歳なら210mLです。この式は4〜12歳向けで、3歳以下には当てはめられません。また、おしっこの回数は膀胱の大きさより、飲んだ量や汗の量に左右されます[3]。式は「何時間もつか」を計算するためではなく、子どもの膀胱は大人よりずっと小さいと知るための目安です。

山でこれをどう使うか。私は次のように組み立てます。

  • 登山口のトイレで、一度誘う。次のトイレまで2時間以上空くことが多いからです
  • 休憩のたびに「行っておこう」と声をかける。「出る?」と聞くと、遊びたい子は「出ない」と答えます。出なければそれで構いません
  • 途中にトイレがあれば寄る。山小屋や休憩舎のトイレは、次がいつあるか分かりません
  • 「おしっこ」と言われたら、近くの安全な場所ですぐ止まる。外れたばかりの子は、言ってから我慢できる時間が短いからです

嫌がるときは、無理にさせません。トイレを嫌な場所にしてしまうと、次の章で書く「我慢」の入口になるからです。

歩く時間の長さや休憩の入れ方は、子どもは登山で何km歩ける?年齢別の目安と休憩の入れ方にまとめています。休憩の間隔をトイレの間隔に合わせておくと、計画が組みやすくなります。

うんちの我慢は子どもの便秘のいちばんの原因|トイレを嫌がらせず、水も減らさない

子どもの便秘でいちばん多い原因は、痛い・怖い排便のあとに始まる「うんちの我慢」です[4]。我慢すると便は硬くなり、次の排便がまた痛くなる。この悪循環が、子どもの便秘を長引かせます。

うんちの我慢が便秘を長引かせる悪循環 嫌なトイレ・痛い排便→我慢→便が硬くなる→次の排便がまた痛い 山ではトイレを嫌がらせず水は減らさない ヤマカルテ

慣れないトイレは、この我慢の引き金になりやすい場所です。オランダの8〜16歳の子ども1,000人を対象にした調査では、学校でうんちを我慢している小学生が51.2%いました。理由の多くは、衛生とプライバシーでした[5]。学校の研究で、山のトイレを調べたものではありません。それでも、汚い、におう、人目が気になるトイレを子どもが避けることは、繰り返し示されています。

山のトイレは、まさにその条件がそろう場所です。

さらに、便秘はおしっこのトラブルともつながっています。子どもの便秘は、くり返す尿路感染(膀胱炎など)やおねしょにつながりうるとされています[8]。1回の山で我慢したら病気になる、という話ではありません。ただ、トイレを嫌がる経験を山で重ねないことには意味があります。

山のトイレが子どもに難しい理由は4つ|和式・暗さ・におい・数時間ない区間

山のトイレが子どもに難しいのは、和式が多い、暗い、においが強い、トイレのない区間が数時間続くという4つが重なるためです。

山のトイレが子どもに難しい4つの理由 和式・暗さ・におい・トイレがない区間 地図でトイレの場所を確かめトイレからトイレまでの時間を書き出す ヤマカルテ

  1. 和式:足腰が発達途中の子は、しゃがんだ姿勢を保つのが不安定です。穴の大きな汲み取り式は、落ちそうで怖がります
  2. 暗さ:小屋の外にある個室は、昼でも薄暗いことがあります
  3. におい:汲み取り式やバイオトイレは、街のトイレとはにおいが違います
  4. トイレがない区間:登山口と山小屋のあいだに、トイレが一つもないコースは珍しくありません

和式で子どもをしゃがませるときは、親が子どもの後ろにしゃがみ、両脇か両ももの裏に手を添えて体を支えると安定しやすくなります。洋式なら、子どもには便座の穴が大きすぎます。補助便座を載せると、落ちそうな不安を減らせます。

計画の段階で、地図や山小屋の公式サイトでトイレの場所を確認し、トイレからトイレまでの時間を書き出しておくと、休憩の位置が決まります。山小屋のトイレは、利用料(チップ)を払う方式が多いので、小銭も忘れずに。

おむつ期のおむつ替え|替える場所を先に決め、ゴミは袋で持ち帰る

おむつの子の山で困るのは、おむつ替えの台がないことが多い点です。登山口のトイレにも、山小屋のトイレにも、ほとんどありません。

私の場合、下の子のおむつ替えは、出発前は車のトランクで、山の上ではベンチを使いました。どちらも、平らで、子どもを寝かせられて、親がしゃがまずに手を動かせる場所です。替えたおむつは袋に入れて口を縛り、持ち帰りました。

高さのある場所で替えるときは、子どもから片手を離さないことが前提です。寝返りや足のばたつきで、子どもは一瞬で台から落ちます。ベンチは他の登山者も使う場所なので、シートを敷いてから寝かせます。

おむつ期の準備は、次の5つを押さえておけば困りません(持ち物の一覧は後のチェックリストにまとめています)。

  • 替える場所を決めておく:登山口は車の中かトランク、山の上はベンチや平らな休憩所。地図で休憩所の位置を見ておく
  • 敷くものを1枚:おむつ替えシートか、小さなレジャーシート。ベンチが濡れていても使える
  • 持ち帰り用の袋:防臭袋を、替える回数分+予備。おむつは山にゴミ箱がないと考えておく
  • おむつは予定より多めに:休憩のたびに確認し、まだ濡れていなくても早めに替える
  • おしりふきと着替え:漏れたときのために、替えのズボンと靴下も一緒に

キャリアに乗っている子は、おむつが濡れても親から見えません。私は実際に、行動中におむつから漏れて、子どもの下半身を濡らして冷やしてしまったことがあります。濡れと冷えの話は、子どもの登山の服装で詳しく書いています。

山のおむつ替え5つの準備 替える場所を決めておく・敷くものを1枚・持ち帰り用の防臭袋・おむつは予定より多めに・おしりふきと着替え 高い場所では子どもから片手を離さない ヤマカルテ

移行期の道具は折りたたみ補助便座と携帯トイレ|トイレのない区間に備える

おむつが外れたばかりの子には、洋式トイレで使える補助便座と、トイレがない場所で使える携帯トイレの2つがあると、トイレのない区間にも備えられます。

移行期の道具は折りたたみ補助便座と携帯トイレ 補助便座は折りたためる・洋式トイレに載せられる・おまるにもなる 携帯トイレは吸水ポリマーで固め防臭袋で持ち帰る ヤマカルテ

補助便座:選ぶなら、おまるにもなる折りたたみ式

山で使う補助便座は、折りたためること、洋式トイレに載せられること、袋をつけておまるとしても使えることの3つで選びます。山のトイレは洋式とは限らず、トイレそのものがない区間もあるからです。

上の子のために、私がこれから持ち歩こうと考えているのは次の1つです。まだ使っていません。

携帯トイレ:トイレがない場所で使い、持ち帰る

携帯トイレは、袋の中で尿や便を吸水ポリマー(凝固剤)で固め、防臭袋に入れて持ち帰る道具です。子どもに使うときは、親が袋を支えてあげます。使い方と量の目安は、製品の説明書で確かめてください。

私が持ち歩いているのは、モンベルのO.D.トイレキットです。冬の小屋が閉まっている時期のテント泊で、実際に使っています。1個(1回分)で約43g(モンベル公式の表示)。ザックに入れても重さはほとんど気になりません。子どもと大人の人数×行程の回数に、予備を1つ足して持っていきます。

年齢と段階で変わる持ち物チェックリスト

おむつ期

  • おむつ(予定より多め)
  • おしりふき
  • おむつ替えシート(小さなレジャーシートでも可)
  • 防臭袋(持ち帰り用)
  • 替えのズボンと靴下

おむつが外れたばかりの時期(移行期)

  • 予備のおむつ(2枚ほど)
  • 折りたたみ補助便座
  • 携帯トイレ(人数×回数+予備)
  • 替えのパンツ・ズボン・靴下
  • トイレットペーパーとウェットティッシュ
  • 防臭袋

トイレが自立した時期

  • 携帯トイレ(人数×回数+予備)
  • トイレットペーパー
  • 替えのパンツ(念のため)
  • 小銭(山小屋のトイレの利用料)

日帰り全体の持ち物は、日帰り登山の持ち物リストと組み合わせて確認してください。子どもの年齢や行程を選ぶと必要な装備が並ぶ登山の装備チェックリストも使えます。

携帯トイレの持参を求める山もある|早池峰山・屋久島・大雪山

山によっては、携帯トイレの持参そのものが求められています。子ども連れかどうかに関係なく、行く前に確認しておきたい点です。

携帯トイレの持参を求める山 大雪山国立公園(北海道)・早池峰山(岩手県)・屋久島の山岳部(鹿児島県) トイレのない場所で出したものは携帯トイレで持ち帰る ヤマカルテ

  • 早池峰山(岩手県):登山口で携帯トイレを販売し、山頂避難小屋と登山道の途中に携帯トイレ用のブース、登山口に使用済みの回収箱を置いています(岩手県の令和3年度の事業報告より)
  • 屋久島の山岳部:宮之浦岳などの登山者に携帯トイレの持参を呼びかけ、ブースと回収箱を設けています(環境省の資料より)
  • 大雪山国立公園:「大雪山国立公園携帯トイレ普及宣言」で、携帯トイレを常に持参し、常設トイレがない場所では携帯トイレを使うよう登山者に呼びかけています(環境省の資料より)

これらの山は、子どもが登るには行程が長いところが多いのも事実です。ただ、低山でも同じ考え方が当てはまります。トイレのない場所で出したものは、携帯トイレで持ち帰る。子どもに教えるなら、最初の山からこれを当たり前にしておくのがいちばん楽です。

運用は年ごとに変わるので、出かける前に、その山の管理者や山小屋の最新情報を確認してください。

まとめ:トイレは、子連れ登山を諦める理由にしない

  • おむつが外れる時期は、米国の調査で平均2.4歳。個人差が大きい。外れたばかりの山は、予備のおむつで備える
  • 子どものおしっこは1日5〜6回が目安。登山口と休憩のたびに「行っておこう」と誘い、嫌がるときは無理にさせない
  • 子どもの便秘で最も多い原因はうんちの我慢。山のトイレは我慢を招く条件がそろう
  • 水は減らさない。減らすのではなく、トイレの機会を増やす
  • おむつ期は替える場所を先に決め、ゴミは防臭袋で持ち帰る
  • 移行期は折りたたみ補助便座と携帯トイレで、トイレのない区間に備える
  • 携帯トイレの持参を求める山がある。行く前に確認する

トイレの心配が減ると、親の頭の中に、景色と子どもの顔を見る余裕が戻ってきます。次の山行では、まず登山口とトイレの場所を地図で確かめ、携帯トイレを1つザックに入れてください。

子連れ登山のほかの備えは、子連れ登山の注意点・安全対策に場面別でまとめています。

参考文献

  1. Bloom et al., 1993. Toilet habits and continence in children: an opportunity sampling in search of normal parameters. Journal of Urology.
  2. Baird et al., 2019. Toilet Training: Common Questions and Answers. American Family Physician.
  3. Austin et al., 2016. The standardization of terminology of lower urinary tract function in children and adolescents: Update report from the standardization committee of the International Children’s Continence Society. Neurourology and Urodynamics.
  4. Mugie et al., 2011. Constipation in childhood. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology.
  5. van Streun et al., 2026. Stool Withholding at School Among Children in the Netherlands. JAMA Network Open.
  6. Taubman, 1997. Toilet training and toileting refusal for stool only: a prospective study. Pediatrics.
  7. Breinbjerg et al., 2021. Does the development and use of modern disposable diapers affect bladder control? A systematic review. Journal of Pediatric Urology.
  8. Chowdhury et al., 2024. Constipation: A Pristine Universal Pediatric Health Delinquent. Cureus.