
山で子どもにおやつを渡すとき、大人の行動食の袋からそのまま分けていませんか。
ミックスナッツ、柿の種、飴、ラムネ。どれも登山の定番です。ところが、この顔ぶれの多くが幼い子どもが窒息しやすい食べ物の一覧と重なっています。消費者庁は、硬い豆やナッツ類を5歳以下の子どもに食べさせないよう呼びかけています[1]。
結論から書くと、守ることは2つです。5歳以下には硬い豆・ナッツを渡さない。食べるのは、止まって座った休憩のときだけにする。 山ではこの2つが崩れやすい場面がいくつもあります。
私は理学療法士(PT)として10年以上、呼吸と体の動きを扱ってきました。いまは3歳と2歳の子どもをキャリアに乗せて山に通っています。この記事では、消費者庁と日本小児科学会の資料をもとに、どのおやつを・どんな形で・どのタイミングで渡すかを整理します。読み終えるころには、次の山行のおやつ袋の中身と、食べさせる場所が決まっているはずです。
5歳以下の子どもには、硬い豆・ナッツを食べさせない
豆やナッツ類のように硬くてかみ砕く必要のある食べ物は、5歳以下の子どもに食べさせないことが、消費者庁の呼びかけです[1]。のどや気管に詰まると窒息しやすく、小さく砕いても、気管に入れば肺炎や気管支炎を起こすおそれがあるとされています[1]。

数字も示されています。消費者庁が人口動態統計を分析したところ、2014〜2019年の6年間に、食べ物による窒息で亡くなった14歳以下の子どもは80人、そのうち5歳以下が73人でした[1]。9割が5歳以下です。
なぜ「5歳」まで気をつけるのか
日本小児科学会の資料は、理由を子どもの体の側から説明しています[3]。
- 乳歯が生えそろうのは通常3〜4歳ごろで、それ以降もかむ力は大人より弱い
- 硬いものをうまくかめず、丸のみしてしまうことがある
- 咳をする力が弱く、気道に入りかけたものを咳で押し返せない
奥歯が生えそろっても、かむ力と咳の力はまだ育ちきっていません。だから「もう歯は全部ある」ことを、豆やナッツを解禁する理由にしないでください。
大人の行動食に、ナッツは入っていないか
山で気をつけたいのは、大人の行動食にナッツが混ざっていることです。ミックスナッツやトレイルミックスはもちろん、柿の種にもピーナッツが入っています。
大人が手のひらに出したものを、子どもが横から取る。上の子が自分のおやつを下の子に分ける。日本小児科学会も、年上のきょうだいが自分と同じものをそのまま与えてしまうことに注意をうながしています[3]。
わが家では、子どもと大人のおやつを袋ごと分けています。大人の袋を子どもの前で開けないようにするだけでも、取り違えは減らせます。
詰まりやすいのは「丸い」「くっつく」「かみ切りにくい」食べ物
子どもが窒息しやすい食べ物は、形と性質で3つに分けられます[3]。品目を全部覚えるより、この3つの特徴で見分けるほうが、初めて見るおやつにも応用できます。

- 丸くてつるっとしたもの:口の中で滑り、かむ前にのどへ落ちやすい。丸い形はのどにはまり込んで、空気の通り道をふさぎやすい
- くっつきやすく、唾液を吸って飲み込みにくいもの:口の中に貼りつき、取れにくくなる
- 硬くてかみ切りにくいもの:十分に小さくならないまま、のどへ送り込まれる
アメリカ小児科学会も、窒息のリスクには食べ物の形・大きさ・硬さが関わるとしています[4]。
山でよく持っていくおやつは、どれに当たるか
日本小児科学会の一覧[3]と保育施設向けの国のガイドライン[5]を、山のおやつに当てはめると次のようになります。
| おやつ | 特徴 | 扱い |
|---|---|---|
| ナッツ・豆・柿の種のピーナッツ | 硬い | 5歳以下には渡さない |
| 飴・ラムネ | 硬い・丸い | 幼児には避ける |
| 丸い個包装チーズ | 丸い・つるっとしている | 丸のままで渡さない |
| ぶどう・ミニトマト | 丸い・つるっとしている | 4等分する |
| ソーセージ | 弾力がある・丸い | 縦半分に切る |
| おにぎり・パン・カステラ・せんべい | くっつく・唾液を吸う | 先に水分をとる・一口を小さく |
| りんご | 硬い・かみ切りにくい | 小さく切る。離乳が終わるまでは加熱する |
飴は、アメリカの救急外来のデータでも目立ちます。2001〜2009年に、食べ物による窒息(命に関わらなかったもの)で救急外来を受診した0〜14歳の子ども(推計約11万人)では、原因の食べ物でいちばん多いのが硬い飴(15.5%)でした[7]。
切り方を変えても、窒息しなくなるわけではありません。座って、少しずつ食べることとセットで考えてください。
ぶどうやミニトマトは、日本小児科学会が特に4歳以下では4分の1に切るよう示しています[3]。山に持っていくなら、家で切って容器に入れておくと現地で手間がかかりません。
「食べ慣れたもの」でも、油断はしない
山で初めての食べ物を出すより、普段から食べ慣れているおやつを持っていくのが基本です。わが家では、卵ボーロなど、スーパーで売っている幼児向けのお菓子を持っていきます。
なお、市販のおやつに書かれている対象月齢には、はっきりした根拠や法的な基準はないと日本小児科学会は指摘しています[3]。表示は目安と考え、わが子の歯の生え方やかむ力に合わせて選んでください。
ただし、こども家庭庁は保育施設への通知で、年齢や月齢によらず、普段食べている食材でも窒息につながる可能性があると注意しています[6]。食べ慣れていることは、山で新しい不安を増やさないための条件です。窒息を防ぐ条件ではありません。
山で危ないのは「歩きながら」「泣きながら」食べる場面
子どもの窒息は、食べ物そのものに加えて、食べているときの行動で起きやすくなります[3]。口に物を入れたまま、走ったり、笑ったり、泣いたり、声を出したりすると、ふいに吸い込んでしまうからです[1]。
消費者庁が紹介している事故には、山の場面と重なるものがあります。
- 2歳:アーモンドを口に残したまま歩いていて、もっと欲しがって泣いたときにむせた。ゼイゼイが続いて受診し、右の気管支に異物が見つかって6日間入院[1]
- 5歳:約1cmの丸い飴を歩きながら食べていて、のどをかきむしって苦しがった。意識を失い、胸骨圧迫で約8分後に呼吸が戻り、集中治療室に3日間入院[2]
どちらも「歩きながら」です。登山道は歩きながら何かを口にしやすい場所です。そのうえ、つまずく・段差で体が揺れるといった、平地より大きな揺さぶりがあります。
山で起きやすい「危ない組み合わせ」
国のガイドラインは、食事中に驚かせない、眠くなっていないか注意する、正しく座っているか注意することを挙げています[5]。山に置きかえると、次の場面が当てはまります。
- 歩きながら・登りながら:口に入れたまま揺れる・つまずく
- ぐずっている・泣いている:消費者庁は、泣いているときに食べ物をあげるのもやめるよう呼びかけています[2]
- 山頂ではしゃいでいる:口に入れたまま笑う・叫ぶ
- 疲れて眠そう:下山中の休憩でうとうとしながら食べる
- きょうだい・周りの人から受け取る:親が見ていないところで、合わないものを口に入れる
泣いている子を黙らせるために飴を渡す、という場面は山でもありがちです。泣いているときこそ、口に物を入れないでください。

キャリアの上では食べさせない
わが家では、キャリアに乗せたまま食べさせることはしません。必ずキャリアから下ろして、親子とも休憩のときに食べます。
理由ははっきりしています。背負っている親からは、子どもの顔が見えません。日本小児科学会は、窒息のサインとして急に顔色が悪くなる、声が出なくなる、そして静かになることが特に危ないと書いています[3]。背中の子が静かになっても、親は「寝たのかな」と思い、気づくのが遅れるおそれがあります。
さらに、背中を叩く手当ては、子どもをキャリアから下ろさないとできません。歩きながら背中の子に飴を渡す、という使い方は、窒息の起きやすい条件と気づきにくい条件が重なります。
食べさせ方は「止まる・座る・潤す・少しずつ」
安全な食べさせ方は、止まって座り、水分でのどを潤し、一口を小さく、飲み込んだのを見てから次を渡すことです。日本小児科学会と消費者庁の資料をまとめると、この4つになります[1][3]。

- 止まる:歩きながら、遊びながら食べない。休憩で足を止めてから袋を開ける
- 座る:寝転がったまま食べない。岩やシートに座らせ、姿勢をよくする
- 潤す:先に水分をとってのどを潤す。おにぎりやパンのように唾液を吸う食べ物ほど大事
- 少しずつ:一口に詰め込ませない。小さい子には口に入る大きさにしてから渡し、一口ずつ飲み込めたかを見る
山では、このうち「止まる」と「座る」がいちばん崩れやすいところです。子どもは早く歩き出したがり、親も先を急ぎたくなります。口の中が空になったのを見てから歩き出す、を合図にしてください。
家族のルールにしておく
日本小児科学会は、年齢に合った食べ物や食事中のマナーについて、日頃から家族で話し合ってルールを決めておくことをすすめています[3]。
山の上で初めて「歩きながら食べちゃだめ」と言っても、子どもには通じにくいものです。家での食事やおでかけのときから「食べるときは座る」を習慣にしておくと、山でも同じことを言うだけで済みます。
子どもに自分のおやつを持たせる場合も同じです。持つのは歩いているあいだ、食べるのは休憩のとき、と分けて伝えてください。
おやつの量は、いつもの量を休憩ごとに分ける
子どもの登山のおやつは、家でいつも食べている1日分の量を目安に、休憩ごとに少しずつ分けて渡すのが基本です。量を一度に増やすより、分けて渡すほうが一口あたりの詰め込みも防げます。

目安になる数字を挙げておきます。厚生労働省の基準では、3〜5歳の子どもが1日に必要なエネルギーは、ふだんの活動量で男の子1,300kcal、女の子1,250kcalです[8]。保育所の給食の考え方では、3〜5歳児のおやつを1日の約10%とする例が示されています[9]。単純に計算すると130kcal前後です。
ただし、これは保育所で過ごす平日の目安で、山歩きの日に上乗せする量を示したものではありません。子どもの登山で必要な追加量を調べた研究は、見つけられませんでした。
そのうえで、私は次のように考えています。
- キャリアに乗っている子は、自分ではほとんど歩いていない。いつもの量で足りることが多い
- 自分で歩く子は、いつもの量を基準に、休憩ごとに少しずつ足す
- 昼ごはんは昼ごはんとしてしっかり食べ、おやつで置きかえない
大人の行動食の考え方は登山のシャリバテを防ぐ行動食にまとめています。ただ、あちらの糖質量は大人向けの数字なので、子どもにはそのまま当てはめないでください。休憩の入れ方は子どもの登山の距離とペース、水分の目安は子どもの登山の水分と熱中症が参考になります。
のどに詰まったら、咳ができるかどうかで手当てを分ける
食べ物がのどに詰まったときは、声が出て強い咳ができるうちは咳を続けさせ、声が出ない・強い咳ができないなら、すぐに119番通報と背中を叩く手当てを始めます[10]。窒息すると数分で呼吸が止まり、心臓が止まるおそれがあるからです[3]。

窒息のサイン
窒息したときは、急に顔色が悪くなり、よだれを垂らし、苦しそうな顔で声が出せなくなります。とくに急に静かになるのは危険です[3]。1歳未満の赤ちゃんは、こうしたサインが出にくいとされています。
1歳以上の子どもの手当て
日本蘇生協議会のガイドライン[10]と日本小児科学会の資料[3]に沿って、手順をまとめます。
- 大きな声で助けを呼ぶ。声が出ない・強い咳ができないときは、近くの人に119番通報を頼む
- 声が出て、強い咳ができるとき:咳を続けるようにうながし、目を離さずに見守る。咳が弱くなったり、できなくなったりしたら次へ
- 背中を叩く(背部叩打法):子どもの背中、肩甲骨のあいだあたりを手のひらで強く叩く
- それでも出てこないときは、お腹を突き上げる(腹部突き上げ法):後ろから腕を回し、片手で握りこぶしを作って、親指側をみぞおちの下(へそより少し上)に当てる。もう一方の手で包み、手前上方へ勢いよく引き上げる
- 背中を叩く・お腹を突き上げるを、詰まったものが出るまでくり返す(日本小児科学会は5回ずつを1サイクルとしています)
- 途中で反応がなくなったら、ただちに胸骨圧迫から心肺蘇生を始める。まだ通報できていなければ、ひとりでも自分で119番する[10]
見えていないものを、指でかき出そうとしないでください。奥へ押し込んで、完全にふさいでしまうおそれがあります[3][10]。
また、お腹を突き上げたあとは、詰まったものが出ても必ず医師の診察を受けてください。内臓を傷つけている場合があるためです[11]。
1歳未満の赤ちゃんは手順が違い、お腹は突き上げません。頭を下げて、背中を叩くことと胸を押すことを組み合わせます[10]。下の子がまだ1歳未満なら、日本小児科学会の資料と動画でやり方を確認しておいてください。
むせたあと、咳やゼーゼーが続くなら医療機関に相談する
詰まったものが出て落ち着いたように見えても、咳やゼーゼーが続くときは、早めに医療機関に相談してください。かけらが気管支に入ったまま残っていることがあります。息が苦しそう・顔色が悪いときは、迷わず119番です。
先ほどの2歳の例も、むせたあとにゼイゼイが続いて受診し、気管支に異物が見つかりました[1]。硬い豆やナッツは、小さく砕けたかけらでも肺炎や気管支炎の原因になります[1]。「その場はおさまった」で終わらせないでください。
子連れ登山で起きるほかのトラブルと備えは、子連れ登山の注意点・安全対策にまとめています。
まとめ:おやつは「何を」より先に「どこで」を決める
- 5歳以下には、硬い豆・ナッツを食べさせない。小さく砕いても、気管に入れば肺炎や気管支炎のおそれがある
- 食べ物による子どもの窒息死は、2014〜2019年の80人のうち73人が5歳以下だった
- 詰まりやすいのは丸い・くっつく・かみ切りにくい食べ物。飴・ラムネは避け、ぶどうやミニトマトは4等分、ソーセージは縦半分に
- 大人の行動食(ミックスナッツ・柿の種)は子どものおやつと袋ごと分ける
- 山で危ないのは歩きながら・泣きながら・はしゃぎながら・眠いときに食べる場面
- キャリアの上では食べさせない。背中の子が静かになっても、親は気づけない
- 食べさせ方は止まる・座る・潤す・少しずつ。口の中が空になってから歩き出す
- 強い咳ができるうちは咳を続けさせる。声が出ない・咳ができないなら119番と背中を叩く手当てを同時に。反応がなくなったら心肺蘇生
おやつの中身を変えるのは、家で袋を詰めるときにできます。次の山行の前に、子どもの袋からナッツと飴を抜き、ぶどうは4つに切って容器へ。そして山では「食べるのは座ってから」。この2つだけで、山のおやつはぐっと安全になります。
持ち物全体の考え方は子連れ登山の持ち物と安全管理にまとめています。出発前の確認には登山の持ち物チェックリストも使えます(子連れ向けの項目も入っています)。
参考文献
- 消費者庁, 2021. 食品による子どもの窒息・誤嚥(ごえん)事故に注意!―気管支炎や肺炎を起こすおそれも、硬い豆やナッツ類等は5歳以下の子どもには食べさせないで―. 消費者庁 注意喚起資料.
- 消費者庁, 2024. Vol.644 硬い豆やナッツ類をはじめとする食品での窒息や誤嚥に注意!. 子ども安全メール from 消費者庁.
- 日本小児科学会 こどもの生活環境改善委員会, 2025. 食品による窒息 子どもを守るためにできること(2025年8月改訂 Ver.3). 日本小児科学会.
- Committee on Injury, Violence, and Poison Prevention, American Academy of Pediatrics, 2010. Prevention of choking among children. Pediatrics.
- 内閣府・文部科学省・厚生労働省, 2016. 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン【事故防止のための取組み】~施設・事業者向け~. 内閣府.
- こども家庭庁ほか, 2025. 新年度における教育・保育施設等の事故防止に向けた取組の徹底について(事務連絡 令和7年3月12日). こども家庭庁.
- Chapin, M. M., Rochette, L. M., Annest, J. L., Haileyesus, T., Conner, K. A. & Smith, G. A., 2013. Nonfatal choking on food among children 14 years or younger in the United States, 2001-2009. Pediatrics.
- 厚生労働省, 2024. 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書. 厚生労働省.
- こども家庭庁, 2025. 児童福祉施設等における食事の提供ガイド. こども家庭庁.
- 日本蘇生協議会, 2021. JRC蘇生ガイドライン2020 第1章 一次救命処置. 医学書院.
- 日本赤十字社, 2025. 窒息の応急手当. 日本赤十字社.