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登山靴のインソール(中敷き)を替えるかどうか、迷っていませんか? 扁平足や回内足(かかとが内側に倒れる足)と言われたことがあると、「矯正するインソールが要るのでは」と不安になるかもしれません。
結論から書くと、インソールは足の形を治す道具ではなく、靴の中を自分の足に合わせる道具です。選ぶ基準は、足の形の分類よりも「自分のアーチの高さに合い、登山靴に入れて歩いたときに快適か」。扁平足や回内足だからといって、高い矯正タイプを最初から選ぶ必要はありません。
私は理学療法士(PT・リハビリの専門職)として、足や膝の痛みを抱えた患者さんを担当してきました。登山では140座以上を歩き、登山を始めたころから同じモデルの市販インソールを、交換しながら登山靴に入れています。この記事では、インソールと足の形についての研究をもとに、家でできる足の形の確かめ方から、アーチの高さ・かかと・硬さの選び方、入れ方と交換の時期までを整理します。読み終えるころには、店でどのインソールを手に取り、何を確かめればよいかが決まっているはずです。
先に、私が登山靴に入れているインソールを紹介します。選んだ理由と、合う人・合わない人は、このあと説明します。
インソールは足の形を治す道具ではない
インソールは、足の形そのものを治す道具ではありません。足裏のどこに体重がかかるかを変えて、靴の中で足が安定し、圧が一部に集中しないようにする道具です。入れている間は、足の動きや足裏の圧の分かれ方を変えることがあります。ただ、外したあとまで足の形が変わるわけではありません。

扁平足への効果は、研究でまだはっきりしていない
扁平足の成人にインソール(足底装具)を使った研究12本をまとめた系統的レビューでは、効果を裏付ける証拠が足りないと結論されています[1]。研究の多くは8〜80人と小さく、質も低いものでした。
「証拠が足りない」は「効果がない」とは違います。効果があるともないとも、まだ言い切れない段階です。少なくとも「扁平足だからインソールを入れれば治る」と言える研究は、今のところ見当たりません。
足の形に合わせた靴選びでも、ケガは減らなかった
足の形に合わせて靴を選べばケガが減る、とも言い切れません。軍の新兵を対象にした2つの試験(5795人)をまとめると、足の形に合わせたランニングシューズを履いた人と、標準のシューズを履いた人で、ケガの発生率はほとんど変わりませんでした[2]。
回内足そのものがケガにつながるとも言えないことは、登山靴の選び方の記事のコラムで研究をもとに解説しています。
選ぶ前に、自分の足の形を家で確かめる
インソールを選ぶ前に、自分の土踏まずが高めか低めかの傾向を、家で確かめておきましょう。店でインソールの「低・中・高」を試すとき、どこから試すかの参考になるからです。最後に決めるのは、試し履きの感触です。

家でできる3つの見方
家でも、次の3つで大まかな傾向はつかめます。ここで紹介する研究は大人を対象にしたもので、子どもの足には当てはめないでください。
- 足跡を見る:足を濡らして、乾いた紙や色の濃いタオルの上に立ちます。土踏まずの部分がほとんど写らなければアーチは高め、足裏全体が写れば低めです
- 後ろからかかとを見る:家族に、まっすぐ立った姿を後ろから見てもらいます。かかとが内側に大きく倒れていれば回内の傾向があります
- つま先立ちをする:つま先立ちになったとき、土踏まずのアーチが現れるかを見ます
足の形は「いくつかの見方を合わせて」判断する
足の形は、1つの見方だけでは決められません。臨床で使われる「Foot Posture Index(FPI-6)」は、かかとの傾き・くるぶしの形・土踏まずの高さなど6つの項目を組み合わせて足の姿勢を点数にする方法です[3]。学生83人の足を経験の浅い2人の検査者が別々に評価した研究では、2人の評価はよく一致していました[4]。
ただし、足の形の評価方法を調べた26本の研究をまとめたレビューでは、どこからを扁平足と呼ぶかの基準が研究ごとにばらばらでした[5]。家での確認は、アーチの高さを決めるものではなく、「店でどのタイプから試すかの参考」と考えてください。
選ぶ基準は「履いて快適か」
インソールを選ぶ基準は、登山靴に入れて歩いたときに快適かどうかです。快適さは好みの問題に見えますが、研究では足の動きや体の使い方と関係していました。

快適なインソールで、痛みや疲労骨折が少なかった
軍人206人を対象にした研究では、形や素材の違うインソールを試したところ、どのインソールも、入れない場合より快適と評価されました[6]。インソールを使った群では、入れない群に比べて、疲労骨折や体の各部位の痛みの発生が1.5〜13.4%少ないという結果でした[6]。
同じ研究では、アーチの高さ・足と脚のならび・足裏の感覚によって、快適と感じるインソールが人ごとに違っていました[6]。誰かのおすすめが、自分にも合うとは限りません。
ランナー21人の研究でも、インソールごとの快適さの違いは、足や脚の動き・筋肉の働きの違いと関係していました[7]。「快適」と感じることは、体の使い方の変化を反映していると考えられます。
オーダーメイドだから快適、とは限らない
ランナー40人を対象にした研究では、オーダーメイドと市販のインソールは、どちらも靴に元から入っている中敷きより快適でした[8]。オーダーメイドと市販品の間に、はっきりした差はありませんでした。
一方、軍用ブーツに衝撃を吸収するインソールを入れた男性7人の実験では、インソールを足してもブーツは快適にならなかったと報告されています[9]。インソールを入れれば必ず快適になる、というわけでもありません。
アーチの高さは、自分の足に合わせる
インソールのアーチ(土踏まずの盛り上がり)は、自分の土踏まずの高さに合わせて選ぶのが基本です。アーチが低い人に高いアーチのインソールを入れると、土踏まずが押し上げられて痛むことがあります。

アーチの支えは、足裏の圧を分散させる
健康な成人の35本の研究をまとめたメタ解析では、アーチを支えるインソールで、かかとの内側・外側と前足部の内側の圧が下がり、その分、土踏まずの部分の圧が上がっていました[10]。オーダーメイドでも市販品でも同じ傾向でした。
つまり、アーチの支えは圧を消すのではなく、かかとや前足部にかかっていた圧の一部を、土踏まずに受け持たせる働きです。土踏まずが受け止める量が増えるので、アーチの高さが合っていないと、土踏まずの当たりが強くなります。
回内を抑えたいなら、アーチの高さより「内側の傾斜」
回内足を抑えたいなら、アーチを高くするだけでは足りないかもしれません。立つと土踏まずが下がり、つま先立ちなどで体重を抜くとアーチが現れるタイプの扁平足(柔軟性扁平足)の成人を対象に、11本の研究をまとめたメタ解析があります。インソールの内側に傾斜をつけたタイプでは、歩くときにかかとが内側に倒れる動きが減りました[11]。一方、かかとの傾斜をつけずアーチを支えるだけのタイプでは、はっきりした差は見られませんでした。
ただし、研究ごとのやり方のばらつきが大きく、証拠は弱いとされています[11]。回内と関係しそうな痛みがあるなら、整形外科や、足底装具を扱う理学療法士・義肢装具士に相談してください。
私が高いアーチのタイプを選んだ理由
私は、扁平足や回内足と言われたことはありません。登山を始めたばかりのころ、足を安定させたいと考えて、土踏まずをしっかり支える、アーチの高いタイプを選びました。それが Superfeet の GREEN です。
メーカーの説明では、GREEN は高いアーチ向けで、かかとを包むように成形されたカップと、形を保つための硬めのパーツ(スタビライザーキャップ)がついています[15]。同じシリーズには、アーチが中くらいのタイプと低いタイプもあります。ただし、低いアーチのタイプ(All-Purpose Support Low Arch)は、メーカーがゴアテックスなど防水の裏地がある靴には勧めていません[16]。底の作りが、防水の裏地を傷めることがあるためです。メーカーは防水の登山靴向けに、登山用のシリーズ(Hike Support など)を挙げています[16]。土踏まずが低めの人は、防水靴に使えるモデルの中から、店で試してください。
かかとの受け皿と硬さを確かめる
アーチの高さの次に確かめたいのは、かかとを包むカップの深さと、インソールの硬さです。どちらも、登山靴に入れて歩いたときの感触で確かめます。

かかとのカップで、着地の瞬間の足首の傾きが小さくなった
健康な成人のランニングの研究をまとめた先ほどのメタ解析では、アーチの支えに、高さのあるかかとのカップを組み合わせたインソールで、着地した瞬間にかかとが傾く角度が小さくなっていました[10]。
測ったのは、着地した瞬間の角度だけです。平らな道を走ったときの結果で、歩いている間ずっと安定するか、登山道でねんざが減るかまでは確かめていません。
重い荷物の研究では、いちばん硬いものに弱点があった
25kgのザックを背負って傾斜のあるトレッドミルを歩いた研究があります。健康な男性15人に、アーチの支えとかかとのカップがついた硬さ違いのインソール3種類と、平らなインソールを比べてもらいました[12]。
結果は、アーチの支えとカップのついたインソールでは、どの硬さでも、平らなインソールよりかかとの外側の圧が下がりました[12]。一方、いちばん硬いインソールでは、足指にかかる圧が増えていました[12]。研究者は、前足部とかかとが柔らかく、アーチの支えとかかとのカップがある構造が、重い荷物で登るときに有利かもしれないとまとめています。
ただし、これは男性15人が短い時間トレッドミルを歩いた実験です。「重い荷物なら柔らかいほうがよい」と決められるほどの結果ではありません。
登山靴に入れるときの合わせ方
インソールは、靴に元から入っている中敷きと入れ替えて使うのが基本です。重ねて入れると、靴の中が狭くなり、指先や甲が当たります。

入れ替えの手順
- 元の中敷きを取り出す:登山靴の中敷きは、ほとんどが取り外せます
- 元の中敷きを型にして切る:元の中敷きを新しいインソールの上に重ね、かかとの位置をぴったり合わせます。つま先側の輪郭を写し、はさみで切ります。かかとと土踏まずの部分は切りません。切りすぎると戻せないので、少し大きめに切り、靴に入れながら詰めていきます。メーカーは、インソールの先と靴の先の間に1〜2mmのすき間を残すよう説明しています[16]
- 靴に入れて、かかとまで押し込む:インソールのかかとが靴のかかとに収まっているかを確かめます
- 山で履く靴下で履いて歩く:かかとを靴の後ろに寄せたとき、つま先側に少し余裕があるか(目安は指1本ぶん)、甲が圧迫されないか、かかとが浮かないかを見ます
Superfeet のインソールは、靴のサイズに合わせて切って使う前提で作られています。メーカーは、サイズの境目にいる人は半サイズ大きいほうを選ぶように勧めています[15]。いちばん大事なのは、足のかかとが、インソールのカップの「上」に乗るのではなく、カップの「中」に収まることだとも説明しています[16]。
厚みがあるので、ゆとりのある靴に入れる
厚みのあるインソールは、靴の中の容積を使います。GREEN についても、メーカーはゆとりのある靴から標準的な靴向けと説明しています[15]。細身の靴に入れると、甲や指先がきつくなります。
私は GREEN を、夏山用のトランゴタワーと冬用のネパールエボに入れています。インソールを入れたい靴が決まっているなら、靴を買うときにインソールも一緒に持っていき、入れた状態でサイズを合わせると失敗が減ります。靴のサイズ合わせは登山靴の選び方、靴下は登山用靴下の選び方にまとめています。
いきなり長い山に履いていかない
新しいインソールは、近所の散歩や低い山で慣らしてから長い山行に使ってください。痛み・しびれ・皮膚の赤みや傷が出たら、慣らしを続けずに使うのをやめてください。
足裏が当たる場所が変わるので、最初は土踏まずに軽い違和感が出ることがあります。数時間歩いても当たりが強い場所が残るなら、そのインソールは足に合っていない可能性があります。
荷物を背負う山では、インソールの出番が増える
インソールの出番は、重い荷物を背負って長く歩く山で増えます。荷物が重いほど、足裏にかかる圧が大きくなるからです。

32kgを背負った行軍で、かかとの圧が23%下がった
イギリス海兵隊の新兵11人の研究では、軍用ブーツにインソールを入れて、32kgを背負って時速4.8kmで歩いたときの足裏の圧を測りました[13]。試した4種類のインソールは、どれも入れない場合より圧を下げていました。いちばん圧を下げたインソールでは、着地のときのかかとの圧が395kPaから303kPaへ、約23%下がりました[13]。
ただし、測ったのは足裏の圧で、ケガや痛みが減るかまでは確かめていません。テント泊のように重い荷物を背負う日ほど、インソールの差が出やすい、と考えておくのがよいでしょう。荷物の重さそのものを減らす考え方は、登山ザックの選び方で解説しています。
長く歩く人の靴擦れとも関係していた
スペインの巡礼路で、直近5日間に20km以上歩いた315人を診察した研究では、74%に足の水ぶくれがありました[14]。そして、オーダーメイドのインソールを使っている人では、水ぶくれが少ないという関連が見られました[14]。
これは観察研究なので、インソールが水ぶくれを防いだとまでは言えません。靴の中で足が一部だけ強く当たらないようにすることが、靴擦れの対策にもつながる可能性がある、という程度に受け取ってください。靴擦れの防ぎ方は靴擦れの予防と手当てにまとめています。
交換の時期は「形が崩れたら」
インソールは、アーチやかかとのカップの形が崩れてきたら交換します。形が崩れると、選んだときの支えが失われるからです。

Superfeet は、自社のインソールの寿命の目安を、約800km(500マイル)または12か月としています[16]。ただし、山に行く回数や荷物の重さで傷み方は変わります。次のような変化が出たら、期間に関係なく交換を考えてください。
- アーチの部分がつぶれて、平らに近くなった
- かかとのカップに割れや折れじわが出た
- 表面がすり切れて、中の素材が見えてきた
私は、登山靴を買い替えるタイミングでインソールも新しくしています。靴とインソールを同時に新しくすれば、慣らしも1回で済みます。
足に痛みがあるなら、インソールより先に原因を確かめる
かかとや土踏まず、すねの内側などに痛みがあるなら、インソールを選ぶ前に痛みの原因を確かめるのが先です。原因によって、インソールが合う場合も、合わない場合もあるからです。

新兵を対象にした試験では、オーダーメイドのインソールで、すねの内側の痛み(シンスプリント)が減ったという報告もあります[2]。ただし、これは146人の1つの試験の結果です。痛みがある人は、市販品を試す前に、整形外科や足底装具を扱う専門職に相談してください。
かかとや足裏の痛みとインソールの関係は、登山でかかと・足裏が痛いときの記事で、研究をもとに詳しく解説しています。
まとめ:インソールは「足に合わせて、履いて選ぶ」
- インソールは足の形を治す道具ではなく、靴の中を足に合わせる道具。扁平足への効果は、研究でまだ証拠が足りない
- 足跡・かかとの傾き・つま先立ちで自分のアーチの傾向をつかみ、店で試す順番の参考にする。つま先立ちでもアーチが出ないなら受診を
- 選ぶ基準は登山靴に入れて歩いたときの快適さ。快適と感じるインソールは人によって違い、オーダーメイドが市販品より快適とは限らない
- アーチの高さは自分の土踏まずに合わせる。回内を抑えたいなら、アーチより内側の傾斜。痛みがあるなら専門家に相談
- 硬いほど安定とは限らない。私は、かかとにカップがあり足指の下はしなるくらいのものから試す
- 元の中敷きと入れ替えて使い、かかとを合わせてつま先側を切る。厚みがあるので、ゆとりのある靴に
- アーチやカップの形が崩れたら交換。メーカーの目安は約800kmまたは12か月。私は靴の買い替えと同時に新しくしている
インソールは、高いものを選べば安心という道具ではありません。自分のアーチの高さを知り、登山靴に入れて歩き比べれば、市販品でも十分に足になじむものが見つかります。次に登山靴を見に行くときは、山用の靴下とあわせて、インソールの候補も1つ持っていってみてください。
参考文献
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- Yeung et al., 2011. Interventions for preventing lower limb soft-tissue running injuries. Cochrane Database of Systematic Reviews.
- Redmond et al., 2006. Development and validation of a novel rating system for scoring standing foot posture: the Foot Posture Index. Clinical Biomechanics.
- McLaughlin et al., 2016. Inexperienced examiners and the Foot Posture Index: A reliability study. Manual Therapy.
- Carrasco et al., 2021. Non-radiographic validity and reliability measures for assessing foot types: A systematic review. Foot and Ankle Surgery.
- Mündermann et al., 2001. Relationship between footwear comfort of shoe inserts and anthropometric and sensory factors. Medicine & Science in Sports & Exercise.
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- Desmyttere et al., 2018. Effect of foot orthosis design on lower limb joint kinematics and kinetics during walking in flexible pes planovalgus: A systematic review and meta-analysis. Clinical Biomechanics.
- Peng et al., 2023. The Soft Prefabricated Orthopedic Insole Decreases Plantar Pressure during Uphill Walking with Heavy Load Carriage. Bioengineering.
- Windle et al., 1999. The shock attenuation characteristics of four different insoles when worn in a military boot during running and marching. Gait & Posture.
- Chicharro-Luna et al., 2020. Prevalence and risk factors associated with the formation of dermal lesions on the foot during hiking. Journal of Tissue Viability.
- Superfeet. All-Purpose Support High Arch(製品ページ, 2026年11月確認). superfeet.com.
- Superfeet. FAQs(よくある質問, 2026年11月確認). superfeet.com.