下りが続く後半、足の指の付け根がヒリヒリしてきた。休憩で靴を脱ぐと、水ぶくれができていた。登山の靴擦れやマメの多くは軽症です。それでも、一度できると一歩ごとに痛み、残りの行程がつらい時間に変わります。

先に結論です。マメは足の指・指の付け根・かかとにできやすく、場所によって原因が違います。出発前は「靴を合わせる・靴下を濡らさない・伸びすぎた爪を整える・できやすい場所に先にテープを貼る」。歩いている間は、ヒリヒリした段階で止まって貼る。できてしまったら、水ぶくれの皮を破らずに守る。この順番で備えれば、マメで山行を台無しにすることは減らせます。

私は理学療法士(PT)として10年以上、臨床で体と足を診てきました。形成外科の領域では、外反母趾・内反小趾や、糖尿病による足の傷、切断を伴う足の障害にも関わっています。山は140座以上を歩いてきました。私自身もマメを作ったことがあり、できやすいのは足の指の付け根です。

この記事では、マメができる仕組み、できやすい場所とその原因、出発前と歩いている間の予防、できてしまったときの処置、受診の目安を、研究データをもとに順に説明します。読み終えたら、次の山行の前に「自分の足のどこにテープを貼るか」を1か所決めてください。

登山の靴擦れ・マメの予防と対処 秋の登山道わきの岩に置いた登山靴と靴下と紙テープの水彩画 理学療法士が解説 ヤマカルテ

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マメ(靴擦れ)は、皮膚の内側の「ずれ」のくり返しでできる

マメは、皮膚の表面がこすれるだけでなく、皮膚の内側で起きる「ずれ」がくり返されることでできると考えられています[1]。

マメは皮膚の内側のずれでできる 一歩ごとに骨は動き靴下と靴は止まったままで、あいだの皮膚が斜めにずれ、何千歩もくり返されて水ぶくれになる仕組みの図解 ヤマカルテ

靴の中では、骨は一歩ごとに動きます。一方で、靴下と接している皮膚の表面は、摩擦で止まったままです。この差で皮膚の内側が引き伸ばされ、何百回、何千回とくり返されるうちに、層と層のあいだに水がたまります。これが水ぶくれ(マメ)です。2024年の総説は、骨の動き・高い摩擦力・ずれのくり返しの3つがそろうとマメができると整理しています[1]。

長い山歩きでは、マメはとても身近なトラブルです。アメリカのアパラチアン・トレイルを7日以上(平均140日ほど)歩いた長距離ハイカー280人の調査では、64%が足のマメを経験していました[2]。下痢(56%)や皮膚の炎症(51%)を上回り、医学的な困りごとのなかで最も多い結果です。

靴下の素材や濡れとの関係は、「登山用靴下の選び方」でくわしく解説しています。この記事では、どこにできるかと、歩いている最中にどう動くかに絞って説明します。

マメができやすいのは足の指・指の付け根・かかと|場所別の割合と原因

マメは、足の指・指の付け根あたり(足裏の前のほう)・かかとにできやすいことが分かっています。登山者だけを対象にした部位別の調査は見つからなかったため、ここでは長い距離を走る人の研究を紹介します。

マメができやすい場所と原因 ウルトラマラソン走者50人の調査で足の指65%・指の付け根16%・かかと14%・足裏5% 下りの爪先、靴の幅、登りのかかとの浮きが原因の図解 ヤマカルテ

5日間で219kmを走るウルトラマラソンの参加者50人を毎日調べた研究では、マメの場所は次のとおりでした[3]。

場所割合
足の指65%
足裏の前のほう(指の付け根のふくらみ)16%
かかと14%
足裏(土踏まずなど)5%

砂漠を250km走るレースの別の研究でも、マメの半分(50%)は足の指、23%はかかとにできていました[4]。どちらも登山より厳しい条件で、登山にそのまま当てはまる数字ではありません。それでも、指・指の付け根・かかとの3か所は、歩き方や靴の状態によって擦れやすい場所として意識しておく価値があります。

足の指|下りで、指先が靴の先に当たる

足の指のマメは、下りで足が靴の中で前にすべり、指先や指の背が靴に押しつけられることで起きやすくなります。爪が伸びていると、爪が皮膚や靴に当たって、そこが擦れの起点になります。

私は山行の前に、伸びすぎた爪を整えておくことを毎回心がけています。爪はまっすぐ切り、角を深く切り込まないのが基本です[5]。深爪にすると、巻き爪や皮膚の傷につながります。

下りの前に靴ひもを締め直すことも大切です。足の甲をしっかり押さえると、足が靴の中で前にすべりにくくなります。

足の指の付け根|私がいちばん作りやすい場所

足の指の付け根は、私がいちばんマメを作りやすい場所です。足裏の前のほう、指の付け根のふくらみは、登りでも下りでも、蹴り出すたびに体重がかかり続けるからです。

かかと|登りで、かかとが浮いて上下にずれる

かかとのマメは、登りで靴の中のかかとが浮き、一歩ごとに上下にずれることで起きやすくなります。新しい靴や、足首まわりのひもがゆるいときに起こりがちです。

かかとが浮く人は、足首に近い2つのフックを使ってひもを交差させ、足首まわりを固定する結び方(ヒールロック)を試してみてください。足の甲と足首まわりで締める強さを分けられるので、つま先は窮屈にせず、かかとだけを押さえられます。

靴を足に慣らしておくことも予防になります。軍の夏季訓練の参加者を調べた研究では、直前の2週間にブーツを履いた時間が週20時間未満の人で、マメのリスクが高くなっていました[6]。新しい登山靴は、近所の坂道や低い山で何度か履いてから、長い山行に使いましょう。

マメの予防|出発前にできる4つのこと

マメの予防で大切なのは、靴を合わせる・靴下を濡らさない・伸びすぎた爪を整える・できやすい場所に先にテープを貼るの4つです。

出発前にできるマメ予防4つのチェック 靴を合わせて履き慣らす・靴下を濡らさない・伸びすぎた爪を整える・できやすい場所に先に紙テープを貼る 図解 ヤマカルテ

靴下は「濡らさない」ことと、組み合わせ方

靴下で大切なのは、濡らさないことです。汗や雨で濡れた靴下は皮膚の摩擦を大きくし、マメのリスクを高めます[7]。長い行程では、替えの靴下を1足持っていきましょう。

靴下の素材・厚さ・組み合わせによって、マメの数が変わった研究もあります[8]。くわしくは「登山用靴下の選び方」を参照してください。

できやすい場所には、痛くなる前にテープを貼る

マメ予防で比較的よく検証されているのは、紙テープ(医療用の紙のテープ)です[9]。

砂漠のウルトラマラソンで、マメのできやすい場所に紙テープを貼った2016年の試験では、マメが40%減りました[4]。一方、同じ研究チームの2014年の試験では、はっきりした効果は確認できませんでした[10]。2つの試験では、貼る場所や比べ方が違っていて、結果が分かれた理由ははっきりしていません。

つまり、足全体に貼れば防げるのではありません。自分のできやすい場所に、痛くなる前に貼るのが現実的な使い方です。フランスのトレイルランの参加者533人の調査では、過去にマメができたことが、強いリスク因子でした[11]。

制汗剤や潤滑剤は、効果と副作用を知ってから

足用の制汗剤や潤滑剤(すべりをよくするクリーム)にも、予防の目的があります。ただ、どちらも確かな根拠はまだ十分ではありません[9]。

士官候補生が21km歩いた試験では、20%塩化アルミニウムの制汗剤とプラセボ(有効成分のない塗り薬)を比べました。指示どおり3晩以上塗れた269人で見ると、マメは制汗剤で21%、プラセボで48%でした。一方で、皮膚のかぶれは制汗剤で57%にのぼり、プラセボの6%を大きく上回っています[12]。試すなら、山行の前に街で何度か使って、肌に合うかを確かめてからにしてください。

歩いている間は「ヒリヒリ」で止まって貼る

歩いている間にできる一番の対策は、ヒリヒリ・熱っぽい感じがした段階で立ち止まり、テープを貼ることです。この前兆の段階をホットスポットと呼びます。

ヒリヒリしたら止まる3ステップ 立ち止まって靴を脱ぐ・湿っていれば靴下を替える・赤い場所に紙テープを貼り、靴ひもを締め直して歩き出す 図解 ヤマカルテ

マメは、ずれのくり返しで少しずつできます。ヒリヒリした段階で摩擦を止めれば、水ぶくれになる前に食い止められることがあります。「次の休憩まで我慢しよう」と歩き続けると、マメの悪化につながりかねません。

私自身は、指の付け根がヒリヒリしてきたら、靴下を替えるか、紙製のサージカルテープ(医療用テープ)を貼るようにしています。靴下が汗で湿っているときは替えるだけで楽になることが多く、それでも気になるときはテープを貼ります。

私が持ち歩いているのは、細く切って小さな袋に入れたサージカルテープです。同じ用途の定番品を紹介します。

テープは持っているだけでは役に立ちません。痛くなる前に貼ってこそです。

登山中の水ぶくれは潰していい?破れたときの応急処置

マメができてしまったら、水ぶくれの皮(屋根の部分)を破らずに、覆って守るのが基本です。

水ぶくれは潰さない 破れていない・破れた・皮がはがれた状態別の応急処置と、紙テープを傷に直接貼る・山で針を刺す・化膿した傷を密閉するなどしないこと 図解 ヤマカルテ

水ぶくれの皮は、その下の新しい皮膚を守るふたの役割をしています。皮が残っていれば、傷口が外に出ず、痛みも少なくて済みます。マメの総説でも、水ぶくれの皮を残しておくことの利点が述べられています[13]。

大きく張って歩けないときに、針で小さく穴を開けて中の水を抜き、皮は残す方法も紹介されています[13]。ただ、この方法の根拠は臨床の経験によるもので、比較した研究は十分ではありません。山の上では道具や傷を清潔に保つのが難しいので、登山中に自分で穴を開けるのは勧めません。歩けないほど痛むときは、行程を短くして下山し、医療機関で相談してください。

ウルトラマラソンで、できてしまったマメに使う2種類の伸縮テープを比べた最新の試験もあります。治療がうまくいった割合に、はっきりした差は出ませんでした[14]。ただし、これは特定のテープ同士の比較で、紙テープや傷パッドを比べたものではありません。

救急セットに入れておきたいもの(紙テープ・傷パッド・替えの靴下など)は、「登山の救急セットの中身」にまとめています。

マメで受診する目安と、糖尿病・足の感覚が鈍い人の注意

マメの多くは、擦れを止めて守っていれば自然に治っていきます。次のようなときは、自分で手当てを続けず、医療機関を受診してください。

マメで受診する目安 赤みの広がり・うみ・発熱やリンパ節の腫れ・深い傷や治らない傷と、糖尿病や足のしびれがある人は自分で処置せず主治医に相談 図解 ヤマカルテ

  • マメのまわりの赤みが広がる、熱をもって腫れる、うみが出る
  • 熱が出る、マメの近くのリンパ節(足の付け根など)が腫れて痛む
  • 傷が深い、出血が止まらない、なかなか治る気配がない

まとめ:マメは「できやすい場所」を知って、痛くなる前に守る

  • マメは、皮膚の内側の「ずれ」のくり返しでできる。長距離ハイカーの調査では64%が経験
  • できやすいのは足の指・指の付け根・かかと(ウルトラ走者の調査で65%・16%・14%)。場所によって原因が違う
  • 足の指は下りのすべりと爪、指の付け根は足の形と靴の幅、かかとは登りのかかとの浮きが原因になりやすい
  • 出発前は、靴を合わせる・靴下を濡らさない・伸びすぎた爪を整える・できやすい場所に先にテープを貼る
  • 紙テープは、できやすい場所に絞って貼った試験でマメが40%減った
  • 歩いている間は、ヒリヒリした段階で止まって、靴下を替える・テープを貼る
  • できてしまったら、水ぶくれの皮は破らずに守る
  • 赤みの広がり・うみ・発熱は受診。糖尿病や足のしびれがある人は自分で処置しない

マメは、できやすい場所がだいたい決まっています。だからこそ、先回りできるトラブルです。次の山行の前に、自分がマメを作りやすい場所を思い出して、そこに貼るテープを1枚、ザックに入れておいてください。

参考文献

  1. Rushton R, Richie D, 2024. Friction Blisters of the Feet: A New Paradigm to Explain Causation. Journal of Athletic Training.
  2. Boulware DR, et al., 2003. Medical risks of wilderness hiking. The American Journal of Medicine.
  3. Scheer BV, Reljic D, Murray A, Costa RJ, 2014. The enemy of the feet: blisters in ultraendurance runners. Journal of the American Podiatric Medical Association.
  4. Lipman GS, et al., 2016. Paper Tape Prevents Foot Blisters: A Randomized Prevention Trial Assessing Paper Tape in Endurance Distances II (Pre-TAPED II). Clinical Journal of Sport Medicine.
  5. Tlougan BE, et al., 2011. Skin conditions in figure skaters, ice-hockey players and speed skaters: part I - mechanical dermatoses. Sports Medicine.
  6. Patterson HS, et al., 1994. Foot blister risk factors in an ROTC summer camp population. Military Medicine.
  7. Hoffman MD, 2016. Etiological Foundation for Practical Strategies to Prevent Exercise-Related Foot Blisters. Current Sports Medicine Reports.
  8. Knapik JJ, et al., 1996. Influence of boot-sock systems on frequency and severity of foot blisters. Military Medicine.
  9. Worthing RM, et al., 2017. Prevention of Friction Blisters in Outdoor Pursuits: A Systematic Review. Wilderness & Environmental Medicine.
  10. Lipman GS, et al., 2014. A prospective randomized blister prevention trial assessing paper tape in endurance distances (Pre-TAPED). Wilderness & Environmental Medicine.
  11. Damoisy JB, et al., 2023. Epidemiology, prevention methods, and risk factors of foot blisters in French trail ultramarathons. The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness.
  12. Knapik JJ, et al., 1998. Influence of an antiperspirant on foot blister incidence during cross-country hiking. Journal of the American Academy of Dermatology.
  13. Knapik JJ, et al., 1995. Friction blisters. Pathophysiology, prevention and treatment. Sports Medicine.
  14. Walker A, et al., 2026. Blister Eradication Looking at Impact of Experimental Versus Established Regimens (BELIEVER). Wilderness & Environmental Medicine.
  15. Bus SA, et al., 2024. Guidelines on the prevention of foot ulcers in persons with diabetes (IWGDF 2023 update). Diabetes/Metabolism Research and Reviews.