登山道の岩の上で足首に弾性包帯を巻いた足元と脱いだ登山靴の水彩画 足首をひねったときの応急処置と再発予防を理学療法士が解説 ヤマカルテ

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「下りでぐきっと足首をひねってしまった。どう対処すればいい?」 「とりあえず冷やして安静にすればいいんだよね……?」

登山で足首をひねった経験、または「ひねりやすくて不安」という方は多いと思います。捻挫(ねんざ)の対処の考え方は、長く定番だった「RICE」から少しずつ変わってきました。

先に答えを書きます。ひねった直後は、まず安全を確保して、骨折などの重いサインがないかを確かめます。安全に歩けないときは、無理に下りず救助を考えます。 診断を受けて重い損傷がなければ、長く安静にし続けるより、保護しながら段階的に動かしていくのが今の考え方です。再発予防には、バランスを含む運動と、必要に応じた足首の装具(ブレース)やテーピングが役立ちます。

私自身も、沢沿いを歩いていて濡れた岩で足を滑らせ、足首をひねったことがあります。幸い大事には至らず、そのまま下山できました。

この記事では、理学療法士(PT)として10年以上臨床に携わってきた立場から、足首の捻挫について原因・受診の目安・その場の対処・再発予防・山に戻る目安まで、研究と診療ガイドラインをもとに整理します。

登山で足首をひねるのはなぜ?——まず原因を知る

不整地で足を内側にひねることが、足首の外側の捻挫の主な起こり方です。

右足を前から見た足首の捻挫の起こり方 親指側が持ち上がり足の裏が内側を向くようにひねると外くるぶしの前の靱帯が伸ばされて傷つきやすい ある登山訓練の調査では下りとザレ場での受傷が多かった 模式図 ヤマカルテ

足首の捻挫は、身体活動をする人に最も多い筋骨格系のケガのひとつで、再発しやすく、慢性的な不安定感につながることもあります[1]。

香港の制服団体(スカウトなど)のメンバーと指導者590人を調べた質問紙調査では、54人(9.15%)が登山訓練中の足首の捻挫を申告しました。受傷した場所はザレ場が51.9%、傾斜では下りが50.0%でした[2]。靴のサイズや靴ひもの締め具合が合っていないこととの関連も報告されています[2]。

ほとんどは内反捻挫、つまり足の裏が内側を向くようにひねられて起こります。このとき傷つきやすいのが、外くるぶしの前にある前距腓靱帯(ATFL)です。ATFLは、足首の外側にある主な靱帯の中で、引っ張る力に対する強度が小さい靱帯です[3]。

受診の目安:歩けても、骨折は否定できない

体重をかけられない、骨を押すと強く痛む、変形やしびれがある場合は、軽い捻挫と決めつけず、医療対応を優先します。

受診の目安 足の形の変化・しびれ・足先が冷たいや青白いは至急の医療対応 強い痛み・体重をかけられない・骨を押すと強く痛むは骨折の評価が必要 歩けても骨折は否定できない 数日で引かない痛みは整形外科へ ヤマカルテ

骨折の可能性を考えたいのは、次のような場合です。

  • 外くるぶし・内くるぶしの後ろ側や先端を押すと強く痛む
  • 足の外側の、小指寄りの付け根の骨を押すと強く痛む
  • 足の甲の内側の骨を押すと強く痛む
  • ひねった直後から、体重をかけて4歩歩くことができない

これは医療者がX線検査の必要性を判断するときの考え方(オタワ足関節ルール)を参考にした、一般向けの目安です[20]。歩けても骨折は否定できません。 無理に歩いて試さないでください。

捻挫の重さは、医療者が靱帯の損傷の程度で分類します(Grade I〜III)[4][3]。分類の方法はいくつかあり、山の中で自分で判定するものではありません。重い損傷でも、まずは手術をしない治療が基本です。十分なリハビリのあとも不安定感などが残る場合に、手術が検討されます[4]。

その場の対処:「RICE」から「保護しながら段階的に動かす」へ

山ではまず保護して安全を確保し、歩いてよいかを判断します。回復期の運動は、その次です。

捻挫の対処の流れ まず保護して重いサインを確認 安全に歩けなければ救助を検討 診断を受けて重い損傷がなければ状態に合わせて段階的に動かす 冷却は痛みをやわらげる補助 ヤマカルテ

長いあいだ「捻挫といえばRICE(Rest 安静・Ice 冷却・Compression 圧迫・Elevation 挙上)」と教わってきました。ところが、RICEの有効性を裏づける質の高い研究は、十分にはありません[5]。

そこで、長く安静を続けるよりも、重さに応じて保護し、段階的に体重をかけ、動かしていく考え方が重視されるようになりました。この考え方を整理するために提案されたのが、POLICE[21]やPEACE & LOVE[6]です。どちらも、試験で優劣を比べたものではなく、専門家が提案した枠組みです。

POLICE は、Protection(保護)・Optimal Loading(適切な負荷)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)の頭文字です。RICEの「Rest(安静)」を、保護しながら適切に負荷をかけることに置き換えています[21]。

PEACE & LOVE は、ケガの直後(PEACE)と、その後の回復期(LOVE)に分けて考えます[6]。

受傷直後の PEACE(意訳):

  • Protection(保護):1〜3日は無理に負荷をかけず、患部を守る
  • Elevation(挙上):患部を心臓より高く上げる
  • Avoid anti-inflammatory modalities(炎症を抑える治療を避ける):消炎鎮痛薬などに頼りすぎない
  • Compression(圧迫):テープや包帯で腫れを抑える
  • Education(教育):正しい知識を持ち、過度な安静や不要な治療を避ける

回復期の LOVE:

  • Load(負荷):痛みを目安に、少しずつ体重をかけて動かす
  • Optimism(楽観):回復の見通しを持つ。不安が強ければ医療者に相談する
  • Vascularisation(血流):痛みのない有酸素運動で血流を促す
  • Exercise(運動):動く範囲・筋力・バランスを段階的に取り戻す

初めての外側の捻挫82人を対象にした試験では、受傷2日後から保護して体重をかけ、リハビリを始めたグループのほうが、10日後に通常の仕事に完全に戻れていた人の割合が高い結果でした(54%対13%)[7]。ただし、山の中で歩き続けてよいことを示した研究ではありません。

診療ガイドラインでは、骨折などを確かめたうえで、装具などで保護しながら、状態に合わせて段階的に体重をかけ、運動を進めることが勧められています。重い場合は、医療者の判断で10日以内の固定が役立つこともあります[8]。

つまり、RICEが全部まちがいだったのではなく、圧迫や挙上は今も役立つ対処です。大きく見直されたのは、主に「とにかく安静」の部分です。

再発予防:バランスの練習と、必要に応じたブレース

再発予防には、バランスを含む運動と、必要に応じた足首の装具(ブレース)やテーピングが役立ちます。

再発予防 回復に応じて片脚立ちの難しさを調整 目を閉じる・クッションの上などで 平らな室内で壁や手すりのそばで 既往がある人はブレースやテーピングも ヤマカルテ

捻挫の怖いところは、一度やると繰り返しやすいことです。

スポーツをする人を対象にした7試験のメタ解析では、足首の位置や動きを感じ取る感覚(固有受容感覚)を鍛える練習で、捻挫の相対リスクが約35%下がりました。捻挫の既往がある人でも、予防効果が確認されています[10]。別のメタ解析でも、神経筋トレーニングで捻挫が減り、その重要な要素はバランストレーニングで、専用の道具は必須ではないとされています[11]。登山で同じ減り方になるかは分かっていません。

家でできる代表が、片脚立ちです。回復に応じて、目を閉じる、クッションの上に立つなどで難しさを調整します。平らな室内で、壁や手すりのそばで行い、痛みやぐらつきがあるときは無理をしないでください。

捻挫の既往がある人では、ブレースやテーピングにも再発予防の効果が報告されています。捻挫の既往がある競技者を対象にしたレビューでは、ブレースで再発のオッズが約69%、テーピングで約71%低くなりました。どちらが優れるかは、はっきりしませんでした[12]。8週間の神経筋トレーニングと12か月間のスポーツ時のブレース着用を比べた試験では、1年間に自己申告した再発は、ブレースのほうが少ない結果でした(15%対27%)[13]。

運動で足首の働きを整え、捻挫の既往がある人では、ブレースやテーピングも組み合わせる。どちらかが「根本」で、どちらかが「おまけ」というわけではありません。

私自身は使っていませんが、臨床で捻挫をくり返す方に勧めたことがあるのが、次のサポーターです。ケガの直後で腫れがある足には使わず、説明書と医療者の判断に従ってください。

下りでの膝・着地の使い方も捻挫予防と地続きです。あわせて登山の「下り」で膝を守る歩き方や、足元の準備に役立つ登山前後のストレッチ完全ガイドも読んでみてください。

登山靴のハイカットは捻挫を防ぐ?

ハイカットの高さだけで捻挫を防げるという根拠は、限られています。 まずは足に合った靴を選ぶことが大切です。

登山靴のハイカットと捻挫 靴の高さだけによる捻挫予防の根拠は限定的 シャフトが硬い靴では条件によって膝の仕事量が増えた実験も 膝のケガを調べた試験ではない まず足に合った靴を ヤマカルテ

男性20人の実験装置の上では、ハイカットの靴は足首が内側にひねられる量や速さを抑えました[14]。一方、登山ではありませんが、バスケットボール選手622人を対象にした試験では、ハイカットとローカットなどの靴で、足首の捻挫の発生率に有意な差は認められませんでした[15]。

登山靴のシャフト(足首まわり)の高さや硬さを比べた小規模な実験では、平地歩行で足首の動きや仕事量が減り、膝の仕事量が増えました。ただし段差を下りる動作では靴の違いは小さく、膝のケガが増えるかを確かめた研究ではありません[16]。

「ハイカットだから安心」と考えず、まずは足に合った靴を選ぶことが大切です。足首の安定と靴の関係を含めた選び方は登山靴の選び方で、富士山向けの具体例は富士山の持ち物・装備リストでも紹介しています(富士山に限らず応用できます)。行程に合わせて持ち物を絞り込める登山の装備チェックリストも用意しています。

山に戻る目安:日数より、痛みと動きを確認する

山に戻る時期は、日数だけで決めず、痛み・足首の働き・予定する行程に耐えられるかを確認して判断します。

山に戻る目安の確認項目 動作中と翌日までの痛みや腫れ・左右差のない動きと筋力・片脚での安定・段差を下りる動作 これだけで安全は保証できない 短時間・整備された道・軽い荷物から段階的に ヤマカルテ

「捻挫したら何日で復帰できる?」とよく聞かれますが、受傷から何日、と一律には決められません[17]。靱帯の強さは、受傷後数か月かけてゆっくり戻ります[18]。

競技スポーツの専門家の合意では、復帰を考えるときに次の項目を確認するとされています[19]。

  • 痛み:動作中だけでなく、その後24時間の痛み
  • 足首の働き:動く範囲、筋力、持久力
  • バランス:片脚で安定して立てるか
  • 実際の動作:予定する活動に必要な動きができ、続けられるか
  • 気持ち:復帰への不安がどれくらいあるか

登山に当てはめると、次のように考えられます(筆者の提案です)。

  • 平地を歩いたあと、翌日までに痛みや腫れが増えない
  • 片脚で安定して立てる
  • 段差を下りる動作を、くり返しても不安なくできる

これらは確認項目の一例で、これだけで安全は保証できません。 戻るときは、短い時間・整備された道・軽い荷物から段階的に。捻挫をくり返す、不安定感が続くといった場合は、医療者に相談してください。

まとめ:ひねった直後は安全を、回復後は再発予防を

ひねった直後は安全と重いサインの確認を優先し、回復したら運動と必要な装具で再発のリスクを下げます。

  • 登山の足首の捻挫は、足の裏が内側を向くようにひねって起こることが多い。ある調査では下り・ザレ場での受傷が多かった[2][3]
  • 体重をかけられない、骨を押すと強く痛む、変形・しびれ・足先の色の異常があれば、歩いて試さず医療対応や救助を優先[20]
  • 対処は「とにかく安静」から、保護しながら段階的に動かす考え方へ。ただし骨折などを確かめてから[8]
  • 再発予防は、バランスを含む運動と、既往がある人ではブレースやテーピングも[10][12]
  • ハイカットの高さだけで捻挫を防げる根拠は限られる。足に合った靴を[15][16]
  • 山に戻るのは、日数ではなく、痛み・足首の働き・行程への耐性を確かめて段階的に[19]

適切に対処して予防を続ければ、再発のリスクを下げ、山に戻る準備を進められます。「ひねったら冷やして安静」で止まっていた方は、知識をアップデートして、自分の足首を守ってあげてください。


この記事で触れたテーピングは、登山者向けの足首テーピングの巻き方で基本から図解しています。捻挫に備える弾性包帯やテーピングを含めて、山に持っていく装備は登山の救急セット(ファーストエイドキット)の中身でまとめています。

参考文献

  1. Gribble PA, Bleakley CM, et al. 2016. Evidence review for the 2016 International Ankle Consortium consensus statement on the prevalence, impact and long-term consequences of lateral ankle sprains. British Journal of Sports Medicine.
  2. Lam WO, Lui TH, et al. 2011. The Epidemiology of Ankle Sprain During Hiking in Uniformed Groups. Journal of Orthopaedics, Trauma and Rehabilitation.
  3. Fong DT, Chan YY, et al. 2009. Understanding acute ankle ligamentous sprain injury in sports. Sports Medicine, Arthroscopy, Rehabilitation, Therapy & Technology.
  4. Dabadghav R. 2019. Rehabilitation of Lateral Ankle Sprains in Sports. Essentials in Hip and Ankle.
  5. van den Bekerom MPJ, Struijs PAA, et al. 2012. What is the evidence for rest, ice, compression, and elevation therapy in the treatment of ankle sprains in adults? Journal of Athletic Training.
  6. Dubois B, Esculier JF. 2020(オンライン公開2019). Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. British Journal of Sports Medicine. 54(2):72–73.
  7. Eiff MP, et al. 1994. Early Mobilization Versus Immobilization in the Treatment of Lateral Ankle Sprains. American Journal of Sports Medicine.
  8. Vuurberg G, Hoorntje A, et al. 2018. Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains: update of an evidence-based clinical guideline. British Journal of Sports Medicine.
  9. Doherty C, Bleakley C, et al. 2017(オンライン公開2016). Treatment and prevention of acute and recurrent ankle sprain: an overview of systematic reviews with meta-analysis. British Journal of Sports Medicine.
  10. Schiftan GS, Ross LA, et al. 2015. The effectiveness of proprioceptive training in preventing ankle sprains in sporting populations: a systematic review and meta-analysis. Journal of Science and Medicine in Sport.
  11. Vriend I, Gouttebarge V, et al. 2016. Neuromuscular training is effective to prevent ankle sprains in a sporting population: a meta-analysis translating evidence into optimal prevention strategies. Journal of ISAKOS.
  12. Dizon JMR, Reyes JJB. 2010. A systematic review on the effectiveness of external ankle supports in the prevention of inversion ankle sprains among elite and recreational players. Journal of Science and Medicine in Sport.
  13. Janssen KW, van Mechelen W, et al. 2014. Bracing superior to neuromuscular training for the prevention of self-reported recurrent ankle sprains: a three-arm randomised controlled trial. British Journal of Sports Medicine.
  14. Ricard MD, Schulties SS, et al. 2000. Effects of high-top and low-top shoes on ankle inversion. Journal of Athletic Training.
  15. Barrett JR, Tanji JL, et al. 1993. High- versus low-top shoes for the prevention of ankle sprains in basketball players. American Journal of Sports Medicine.
  16. Kersting UG, Støttrup N, et al. 2021. The influence of shaft stiffness on joint kinematics and kinetics during hiking. Journal of Biomechanics.
  17. Tassignon B, Verschueren J, et al. 2019. Criteria-Based Return to Sport Decision-Making Following Lateral Ankle Sprain Injury: a Systematic Review and Narrative Synthesis. Sports Medicine.
  18. Wolfe MW, Uhl TL, et al. 2001. Management of ankle sprains. American Family Physician.
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  22. Martin RL, Davenport TE, et al. 2021. Ankle Stability and Movement Coordination Impairments: Lateral Ankle Ligament Sprains Revision 2021. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 51(4):CPG1–CPG80.
  23. Wagemans J, Bleakley C, et al. 2022. Exercise-based rehabilitation reduces reinjury following acute lateral ankle sprain: a systematic review update with meta-analysis. PLoS ONE. 17(2):e0262023.